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2016年11月30日

東海道五十三次「旅しぐさ」 連載8

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江戸日本橋から始まり京都三条大橋で終点を迎える東海道。昔の旅人達は百二十余里(五百キロ弱)を約二週間かけて橋から橋まで辿り着いた道のりを、私も自分の足で歩きたいと思い立ちました。

女一人、仕事の合間の時間をやり繰りしながら、気ままにテクテクと……この度、ようやく一番の難所、箱根の関所を越え、駿河の国へ到着しました。江戸時代と現代の旅の相違点などを、身を持って体感出来ました。まだまだ旅の途中ですが、少しご紹介しましょう。

まず「女性の美徳は家に居て家事をこなし出歩かない」と言われていた江戸時代に旅に出ること。それだけでも白い目で見られ、再々物見遊山に出歩く女性は離縁の理由にもなったほどでした。またご承知のように「入り鉄砲に出女」と言われ、江戸から出る女性は箱根の関所で相当厳しく取り締まられ、旅のパスポート「往来手形」の他に「関所手形」も必要で、気ままに旅に出る事の難しさが解ります。

当時の旅姿の基本は、男性も女性も手甲、脚絆、頭には笠か手ぬぐい(介さん格さんスタイル)そして杖。持ち物として特徴的なのは火打ち道具一式です。現代との違いとして、火を起こす事の重要さと苦労を感じます。そして磁石、日時計、くすりなどは今も変わらず。また「旅行用心集」が出版されると、歩き方、泊まり方、船の乗り方、用心の仕方など、まさに今でいうガイドブックの役割を果たし、旅の必需品として随分と重宝され、現代でも通用する内容だったようです。

さて、私の旅姿といえば、ジーンズ、スニーカー、帽子、リュツクというもので、持ち物は身の回り品少々と地図。昔と変わらず必要最低限の身軽さ。なんと言ってもこの便利な世の中です。国道には確実にコンビニがありますし、高機能な携帯電話があれば「まあ、なんとかなる」時代になり、有難いような、悲しいような気もします。

旧道にさしかかり、昔に思いを馳せれば、京から江戸へ下る旅人、また江戸から京への旅人の息使いや会話、馬のひづめや荷車の音など、ときおりスッーと通り抜ける風の中に色濃く感じます。狭い道での蟹歩き、行き違いの肩引きなどが目の前に広がり、その温もりまでも伝わって来る不思議な感覚に包まれました。知らない土地への憧れと、現実の生活からのささやかな逃避や解放など、基本的な部分では「東海道」を旅した人達と現代人もそれほど大きな差はないように思われます。しかし、私達現代人は旅をする際、いかに日常の生活習慣を取り込めるかについて用意をするのに対し、江戸の旅では必要最小限に荷物を小さく軽くし、<生きて歩く>のに必要な物しか用意しなかった点が大きな違いであるように思います。

<生きて歩く>解釈によっては現代の方が大変なのかもしれません。先人の旅の知恵をいただきながら、これから先、駿河の国からまた京をめざして歩き出します。

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酒井 悦子
  • 伝統芸能コーディネーター
  • 筝曲演奏家

幼少より生田流箏曲を学び、現在は国際的に活躍する箏演奏家。

箏の修行と同時に、美術骨董に興味を持ち、古物商の看板も得る

香道、煎茶道、弓道、礼法などの稽古に精進する一方で、江戸文化の研究に励み、楽しく解りやすくをモットーに江戸の人々の活き活きとした様子と、古き良き日本人の心を伝えている。

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