天の位

宿の鏡に夫の顔も
入れて嬉しい薄化粧

飛田　芳野

都々逸の雰囲気を詠みっぷりにも情景にも清々しく漂わせて見事。鏡の中にご主人の顔を入れるという言葉の角度にも技量を感じる。

地の位

芦の病もひと時忘れ
あじさい眺める窓の風

太田　堯惠

病(やまい)のつらさを視覚によって慰められるひとときを歌に掬(すく)った。あじさいの七変化に移ろう人生を想う。

人の位

一夜花とてはらりと落ちる
はかない思いの夏椿

岡本　政子

夏椿は沙羅の花のこと。白い花の、その落ち方にはかなさを覚えた作者。落ちるに身を任せる花に女としての覚悟をも感じている。

十　客

慈雨にほだされ畑の仲間
われもわれもと実をつける

手銭　美也子

長寿願って祝杯上げて
元気気力のうたを詠む

惣野　代英子

ぐみに桑の実野いちごすもも
みんな笑顔の幼な顔

大石　志津江

ショートステイで知り合う仲間
同じ想いの語り合い

葛西　ヤヨヒ

痛み病も今落ち着いて
暮らし静かな猫といる

大西　和子

小鳥見ながら我が身を重ね
いつまでこの世にいるのやら

向井　智恵子

やぶの茂みにうの花咲いて
テッペンカケタかほととぎす

松本　タケ

年をとったら我慢が大事
見ても見ぬふり聞かぬふり

石野　文子

汗をかきかきグランドゴルフ
今はしばしの夏休み

黒谷　信子

土手のさつきが色よく咲いた
田舎暮らしも乙なもの

高木　まつ