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2019年10月25日

超高齢社会のリアル -健康長寿の本質を探る- 連載2「寿命」

生物には必ず寿命があります。寿命とは「命(いのち)」のある間(期間)の長さで、生まれてから死ぬまでの期間をいいます。英語に“The first breath is the beginning of death”(うぶ声は死の始まり)という諺がありますが、「命」のある期間は呼吸を始め生物特有の生命活動(栄養を取り入れ、循環・代謝し、成長、老化してゆく一連の過程)が営まれることになります。

人間の寿命には非常に大きな個人差そして集団(民族や国など)の差があります。個人のレベルでの寿命を見てみると、生まれてすぐ死亡するような非常に短い寿命(短命)の例もあれば、100年以上生きるという非常に長い寿命(長命)も存在します。今日の日本のように衛生状態や栄養摂取状況などの生存環境の整った社会では、平均寿命が80歳を越え、100歳を越える人間(百寿者, Centenarian)が約6万8000人(平成29年9月1日現在;厚生労働省発表)という、いわばほとんど多くの国民が高齢まで生存することが可能な社会となっています。このような超高齢社会では、種の限界寿命近くまで生存し、老化に伴って急速に心身の機能が減衰し、「枯れた」状態すなわち「老衰」で死ぬことを寿命と言い換えることも出来ます。

寿命には、男女差が確実に存在しています。生存環境が比較的良く整った先進国ではいずれも男性よりも女性の方が寿命が長いのです。日本人の場合、平成29年の平均定命は女性が87.26歳、男性が81.09歳でその差は約6.2歳ということになります。

寿命における男女差、すなわち女性の方が男性よりも長生きであることの理由としていくつか仮説が報告されています。 それらの中で、特に(1)性ホルモンによる差異;特に女性ホルモンは高血圧や動脈硬化を防ぐ働きがあり、循環器疾患の発症が抑制されるために女性の方が有利である。(2)基礎代謝量の差異;男性のほうが筋肉量が多く、そのために基礎代謝量が大きい。このことは男性において、エネルギー生産過程での副産物として活性酸素(一種の細胞の毒)による細胞障害の割合が高い。そして(3)社会環境の差異;少なくともこれまでは男性の喫煙率が高く、社会的ストレスも大きいとされている。一方女性は男性に比較して、健康的生活習慣、保健行動、健康管理に関心が高いこと、などが主な理由として上げられています。

平均余命が伸びるということは、各年齢毎にその生存数(あるいは生存割合)が増加することを意味しています。表は男女それぞれ10万人の出生に対して各年齢でどのくらい生存数(生存割合%)があるかを示したものです。戦後初の国勢調査では高齢者、すなわち65歳まで生存可能なのは男性でおよそ40%、女性でも50%程度しかありませんでした。いっぽう、現在では65歳まで生存する可能性は男性で89.4%、女性では94.5%となっています。このことは例えば女性の場合100人出生すると約95人は65歳まで生存することを示しており、さらに女性の約半数は90歳代まで生存する可能性を示しています。 超高齢社会を迎えたわが国では、平均寿命のみならず、高齢者の生存数(割合)が著しく伸びていることがお判りですね。

[表] 生命表上の特定年齢まで生存する者の割合の年次推移

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 老年学総合研究所 所長、大学院教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
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老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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