高齢者のための情報サイト【日本老友新聞】

老友新聞
ルーペ

ニュース

2015年08月01日

大腸がん予防と早期発見・生活習慣改善でがんリスク減

50歳くらいから増え始め、高齢になればなるほど罹患者数が増えてゆく大腸がん。厚生労働省大臣官房統計情報部の人口動態統計(2014年)によると、大腸がんは、がんによる死亡者数の中で、女性で1位、男性で3位となっている。女性では14人に1人が、男性では11人に1人が一生のうち一回は大腸がんにかかるとも言われており、侮ってはいけないがんである。今回はこの大腸がんについて詳しくまとめてみよう。

大腸がんといえば、俳優の今井雅之さんが今年5月に亡くなられたことは記憶に新しいだろう。ステージ4、末期の大腸がんを患っていることを自ら記者会見で明かし、テレビなどでも報じられた。大変辛い闘病生活であったという。

では、大腸とはどのような働きを持つ臓器なのか、ご存知の方も多いと思われるが、改めて説明しよう。

我々が食事をする際、食べたものは食道を通り、胃袋へと落ちる。胃袋で消化液と混ぜられ、ドロドロの状態になった食べ物は、小腸にて消化され、ここで栄養分がカラダへと吸収される。栄養分の吸収が済んだ残りかすの状態のものが大腸へと送り込まれ、ここで水分が吸収されて、固形状の便となる。いわば大腸とは便を作り出すための機関なのだ。

また、腸内には様々な細菌が住み着いており、病原菌の増殖を防いだり、免疫力を高めたりする働きも担っている。

次に、大腸がんにある原因はなにか。大腸がんの危険因子にはいくつかあり、中には遺伝など、自分自身では避けにくい因子もあるのだが、多くは生活習慣の改善によって避けられるもの。

まず大きな因子は欧米型の食生活にあるという。肥満は大腸がんの危険因子であり、牛・豚など肉類中心の食生活は良くない。とくにハムやベーコン、ソーセージなどの加工肉、貯蔵肉もリスクを上昇させる可能性が高いという。

またタバコや多量のアルコールもリスクを上昇させると考えられている。

逆に大腸がんのリスクを下げると言われているのが野菜中心の食生活である。実際には、野菜の摂取と大腸がんのリスクは無関係という研究結果もあるが、肉中心の食生活がリスクを高めるという事は分かっているので、バランスの良い食生活を送るためにも、やはり野菜は十分摂取した方が良い。

ほぼ確実に大腸がんリスクを下げると言われているのが運動である。大腸がんの中でも、とくに結腸がんのリスクを40~50%程度下げるという米国の研究結果がある。

運動することによって大腸が活発に働き、便の停留を防ぐことができる。便秘は大腸の粘膜を痛め、大腸がんのリスクを高めるので、運動をし、便をスムースに排泄させることによりリスク低減ができるのだ。また運動をすることによって、がんの発生に関係するといわれるホルモンの分泌を抑制する効果も知られている。

次に大腸がんの検査方法についてお伝えする。大腸がんは早期発見できれば高い確率で治療をすることができるもの。しかし大腸がんの初期は自覚症状が現れず、そのため定期的に大腸がん検査を受診することが大切になるのだ。

最も一般的に行なわれている大腸がん検査が「便潜血検査」と呼ばれるもの。いわゆる便検査だ。大腸内にがんやポリープなどの疾患があると、そこから出血することがある。その血液が便に混じり、排泄されるのだが、通常は目で見ただけで判断することは難しい。そこで目に見えないほどの潜血を検査するのだ。

ただ、出血を伴わないがんやポリープもあり、逆に出血が見られたからといって病変が確実に存在するわけでもない。つまり便潜血検査で大腸がんを100%判定できるわけではないということだ。比較的簡便に、痛みも無く低コストで行なえる検査であるため、標準的に行なわれるが、あくまでも、大腸がんである可能性を探る「ふるい」としての意味で行なわれる検査である。

もう一つ、大腸がんの検査として行なわれるものが「大腸内視鏡検査」である。肛門からカメラを挿入して大腸内を直接観察する。そのためがんやポリープなどを非常に高い精度で識別できる。簡単なポリープなどであれば、検査の途中でそのまま切除術を行なえるのも内視鏡検査の特徴だ。

ただ、大腸内視鏡検査は、事前の準備として腸内を空っぽにする必要がある。検査の前に多量の下剤を飲み、貯まっている便をすべて出し切らなければならず、受診者にある程度負担がかかる。また、検査技師、検査ベッドを1床占有するので、費用的な負担も大きいため、すべての人に行える検査ではない。あくまでも便潜血検査を最初に行い、そこで疑いのある受診者にのみ、精密検査として大腸内視鏡検査を行なうという流れが一般的である。

万一、大腸がんが発見された場合、治療は切除が基本となる。前に説明をした内視鏡による切除や、腹部に小さな穴を空け、そこからカメラと切除器具を入れて、映像を見ながらがんを切除する腹腔鏡手術、腹部を開いて施術をする開腹切除術、放射線治療なども行なわれている。

内視鏡や腹腔鏡による治療を行なった場合、術後は回復が早いという。手術の直後は消化の良い物を選んで、ゆっくりと、食べ過ぎないように気をつける。慣れれば治療前と変わらない食生活に戻すことができるという。

大腸がんは早期発見ならば殆どの場合治癒が可能である。早期発見のためには、まずは毎年、きちんと便潜血検査を受けること。そして異常が発見された場合は、放置せず早めに大腸内視鏡検査を受けることが重要だ。

この記事が少しでもお役に立ったら「いいね!」や「シェア」をしてくださいね。

高齢者に忍び寄るフレイル問題 特集ページ
見学受付中!長寿の森
見学受付中!長寿の森
  • トップへ戻る ホームへ戻る