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2019年01月25日

健康長寿をおびやかす「慢性炎症」に注意。70代前半までは内臓脂肪を減らす努力を!

2017年の日本人の平均寿命は女性が87.26歳、男性が81.09歳で、いずれも過去最高年齢を更新。また、全国の100歳以上の高齢者は、6万9,785人に上り、48年連続で過去最多となっています。ですが、100歳に達しても健康で元気に活動する人と、そうでない人とがいます。この差はなぜ起こるのでしょう?

「百寿者(100歳以上の人)」について、20年以上にわたり研究を続けている、慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターの新井康通先生にお伺いしました。

百寿者は糖尿病、肥満が少なめ。90代は自立した生活の維持も

「多くの百寿者の方々に共通しているのは、90~95歳までは元気な方が多いということ。認知機能はしっかりと維持され、日常生活では自立を保っています。また、動脈硬化や心疾患系の病気が少なく、健康な人が大半。ですが、百寿者は病気知らずかというと、そうではありません」(新井先生)。

新井先生らの研究によると、百寿者のほぼ全員に、何かしらの慢性的な病気があったといいます。最も多かったのは高血圧で、白内障や骨折、心臓病などと続きます。中でも注目は、糖尿病に罹患している人が6%と大変少ないこと。70代の糖尿病罹患率は20%程度ですから、いかに少ないかが分かります。また、肥満の人も少ないが、極端にやせている人も少ないことが分かっています。

「太り過ぎは良くありませんが、75歳を過ぎたら極端にやせているのも心配です。栄養状態が悪いと筋肉が減り、サルコペニア(※1)やフレイル(※2)に陥りやすくなります。筋力が落ちれば活動するのがおっくうになったり、骨折をしやすくなったりと体に悪い影響が出やすくなります。ですから、75歳になったら、いままでより少し多く食べるよう心がけるといいでしょう。骨格筋を維持するため、肉や卵、大豆製品といったたんぱく質が多い食品を積極的に摂ってください」(新井先生)。

※1 サルコペニアとは、加齢や病気によって全身の筋肉量が減少すること。また「歩くスピードが遅くなる」「杖が必要になる」など身体機能の低下も指します。
※2 フレイルとは、健康な状態と日常生活でサポートが必要な介護状態の中間のこと。多くの人は、フレイルを経て要介護状態に進むと考えられています。

年代に応じた対策で、元気に長生きを

百寿者研究の中で分かってきたのが、体の中で進んでいる炎症の程度が低い人ほど、長生きという傾向です。炎症とは、何らかの有害な刺激(細菌などの微生物、高熱、傷を負うなど)を受けたときに体が起こす反応で、「急性炎症」と「慢性炎症」があります。

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「急性炎症」は、けがをしたり病気にかかったりしたときに、傷ついた所が赤く腫れる、熱が出るといった、数日から1週間程度で治る炎症のこと。一方「慢性炎症」は、体内の細胞が老化したり、壊れたりすることで密かに起こり、長期化してしまった状態です。

慢性炎症って?

●体内で起きる弱い炎症で、長い時間をかけてゆっくりと進行する

●感染や傷などに関係なく、加齢に伴い起きる状態

●全身の弱い炎症で、自覚症状はない

「細胞が老化すると、そこから炎症物質が放出され、周囲の細胞へと炎症が広がっていきます。体内での炎症は痛みがなく自覚症状もないため、ゆっくりと時間をかけて進行し、いつの間にか体をむしばみます。徐々に全身に広がり、動脈硬化や脳卒中など、さまざまな病気を引き起こす可能性もあります。ですから、慢性炎症をいかに抑えられるかが、健康長寿の秘訣と考えられます」(新井先生)。

慢性炎症の進行を抑える明確な方法は解明されていませんが、加齢の他、太り過ぎが進行を早めることが分かっています。「健康長寿には、年代に応じた対策が近道です。70代前半までは、食べ過ぎを防ぐ、定期的に運動をするといった生活習慣の改善で、肥満を予防・改善することが大切。内臓脂肪を減らすことで、慢性炎症の進行が抑えられます。逆に75歳を過ぎたら、できるだけしっかりと食べて筋力を落とさないよう心がけてください」(新井先生)。

次の記事「長生きできる人に多い性格とは? 100歳まで生きるために今から心がけたい生活習慣」はこちら。

取材・文/笑(寳田真由美)


<教えてくれた人>
新井康通(あらい・やすみち)先生

慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター総合診療科講師。専門は、百寿者・超百寿者(105歳以上)の研究、超高齢者(85歳以上)の生活習慣調査。


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