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2019年04月01日

介護保険の利用が必要になったらどうすればいい? 申請方法を詳しく解説/介護保険

“人生百年時代”を迎えました。誰もが健康で長生きすることを望んでいると思います。しかし、もし自分、あるいは大切な家族が「介護」が必要になったらと思うと不安になってしまいます。そこで、誰もが知っておきたい「介護保険」について介護に詳しい専門家の高室成幸さんにお聞きしました。

前の記事「介護保険料が支払えなかったらどうなる? 介護保険制度の仕組みを知っておこう/介護保険」はこちら。

いざ、介護保険を利用したい場合に、どこに申請すればいいのでしょう? そしてどのような手続きをすればよいのでしょうか。

介護保険の申請方法は?

健康保険の場合、健康保険証があればケガや病気の際に、病院に行けばすぐ治療してもらうことができます。しかし、介護保険の場合、介護が必要になったからといって、すぐにサービスが受けられるわけではありません。

サービスを利用するには5つの手続きが必要になります。

(1)要介護認定の申請をする

(2)要介護認定調査を受けて要介護が決まる

(3)ケアマネジャー(介護支援専門員)がケアプランを作成する

(4)サービス事業者が介護サービスを提供する

(5)利用者がサービスの費用を一部自己負担(1割~3割)する

【要介護認定の申請をする】

介護を利用したいと思っている人(被保険者)は、市区町村に要介護認定の申請を行います。申請は本人、あるいは家族が行います。家族が遠方に住んでいるなどの事情で窓口に出向くのが難しい場合は、地域包括支援センター、あるいは居宅介護支援事業者に申請を代行してもらうこともできます。

高室さんは「実際の窓口は、住所地を担当する地域包括支援センターになることが多いようですが、どこに申請すればいいかわからない場合は、役所の介護保険担当課などに問い合わせるかインターネットで検索してみるとよいでしょう」と話します。

申請するために必要な書類は、まず、市区町村の窓口やWebサイトから入手できる「介護保険要介護(要支援)認定申請書」です。ここに主治医の氏名や病院名、連絡先なども記載することで、後に市区町村が主治医に意見書の作成を依頼します。主治医がいない場合は、市区町村が指定する医師の下で診察を受け、その後、申請書に医師の名前、病院名、連絡先などを記入します。

他にも「介護保険被保険者証」(介護が必要な人が40~64歳の場合は健康保険被保険者証)と印鑑に加え、個人番号(マイナンバー)と顔写真がある運転免許証などの身分証明書も必要です。

申請書を提出すると、手元になくなった介護保険被保険者証の代わりに「介護保険資格者証」が交付されます。

【要介護認定を受ける】

「介護保険要介護(要支援)認定申請書」を受け取った市区町村は、被保険者の家(病院でも可)に訪問調査員が訪問して調査を行います。訪問調査員は、被保険者の日常生活の動作や問題行動などを聞き取り、必要に応じて簡単な動作をしてもらいます。調査時間は40分~60分です。日常の大変な様子などは口頭で伝えきれないこともあります。メモ程度でよいので書面にして説明するとよいでしょう。

その後、訪問調査員による被保険者の心身の状況調査の結果と主治医意見書の内容をコンピューターに入力することで、どの程度の介護サービスが必要かを推計して、仮の要介護度を決める1次判定がされます。

1次判定の結果をもとに、市区町村に設置されている介護認定審査会が2次判定を行い、申請から30日以内に要介護認定を行い、市区町村が認定結果を通知します。

「ただし、審査や判定などで調査に時間が必要で30日以内に認定がされない場合は、市区町村は30日以内に被保険者に認定に要する期間と理由を通知した上で、延期することができます」と高室さん。

要支援・要介護度別の状態

要支援1 日常生活の基本動作はほぼ毎日自分で行える。家事や買い物などに支援が必要
要支援2 要支援1の状態からわずかに能力が低下し、何らかの支援が必要
要介護1 歩行や立ち上がりなどが不安定で、入浴や排せつなどに一部介助が必要
要介護2 自力での歩行や立ち上がり、入浴や排せつなどに一部介助または多くの介助が必要
要介護3 歩行や立ち上がり、入浴や排せつ、衣服の着脱などに多くの介助が必要
要介護4 介助がないと日常生活を送ることが難しい。入浴、排せつ、衣服の着脱などに全面的な介助が必要
要介護5 日常生活のほぼすべて、身の回り全般において介助が必要

【ケアマネジャーがケアプランを作成する】

要介護度が決まれば、自宅でどのように自立した生活ができるようにするか、を本人(家族)と話し合い、そのためにどのような介護を利用するか、を計画したケアプラン(居宅介護サービス計画書)をケアマネジャーが作成します。

ケアプランは自分で作成することもできますが、制度や費用の知識がないと難しく、通常は居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)に依頼して作成します。もし、自分で作成する場合はケアプランを市町村の介護保険課(地域包括支援センターでも可)に提出します。

施設でサービスを受ける場合は、施設のケアマネジャーが施設ケアプランを作成します。

要支援の場合は、地域包括支援センターが介護予防プランを作成します。そのプランに沿ってサービスを提供する事業所と契約をして、介護予防サービスを利用できます。

【サービス事業者が介護サービスを提供する】

サービス事業者は、訪問介護や通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護(ショートステイ)、福祉用具レンタル、通所リハビリテーションなどの介護サービスを提供します。

提供するサービスは、訪問介護や通所介護などのように介護だけのサービスと、訪問看護や通所リハビリテーションなどのように介護に医療を加えたサービスがあります。
またサービスには、「在宅サービス」と「施設サービス」などがあります。

【利用者がサービスの費用を一部負担する】

介護サービスを受けた利用者は、費用の1割(一定以上の所得者の場合は2割または3割)の自己負担額をサービス事業者に支払います。自己負担額は、利用者の要介護度によって異なります。当然、より多くの介護が必要な状態ほど自己負担額は高くなります。

家族の誰かが、介護が必要な状態になった場合は、とりあえず地域包括支援センターまたは役所の介護保険担当課などに相談してみることをおすすめします。

取材・文/金野和子


高室成幸(たかむろ・しげゆき)さん

1958年京都市生まれ。日本福祉大学社会福祉学部卒。ケアタウン総合研究所代表、日本福祉大学地域ケア推進センター客員研究員、日本ケアマネジメント学会会員。介護施設、市町村やケアマネジャー団体、社会福祉協議会などを対象に研修を行い、施設マネジメントも手掛ける。『身近な人を介護施設にあずけるお金がわかる本』(自由国民社・監修)、『図解入門ビギナーズ 最新介護保険の基本と仕組みがよ~くわかる本』(秀和システム・監修)、『新・ケアマネジメントの仕事術』(中央法規出版・著)など著書多数。


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