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2019年06月27日

ペットボトルのふた、開けられる?「握力低下」の危険性とは

ペットボトルのふた、開けられる?「握力低下」の危険性とは

ニュースなどで報じられる健康にまつわるキーワードを、専門家にわかりやすく解説してもらう、定期誌「毎日が発見」の人気連載。今回は骨折リスクが高まる「握力低下の危険性」について、東京医科歯科大学 整形外科学 医学部内講師の藤田浩二先生にお聞きしました。

握力の低下は筋量の低下。骨折の危険性も!

2019年1月、東京医科歯科大学整形外科等による研究成果が、国際骨粗鬆症財団の公式雑誌・骨粗鬆症医学誌『Osteoporosis International』に掲載。研究によると、握力が低下している人ほど、骨折の危険性が高いことが分かりました。

骨密度の低下により、軽い力で生じる脆弱性骨折。中でも、いちばん初めに起きるといわれているのが手首を骨折する「橈骨遠位端(とうこつえんいたん)骨折」です。女性を中心に40代から見られ、転倒時に手をつくなどで起こります。

東京医科歯科大学では、骨折後にどのような体力状態になるかを調査。手首を骨折し手術した人と骨折していない人とに分け、それぞれ握力と体幹バランスを計測。その結果、骨折した人は、術後2週間の調査では、骨折していない人に比べ体幹バランス、骨折していない手の握力がともに低く、さらに術後6カ月たっても骨折していない手の握力は低下したままでした。

「握力が低下している人は、同年代に比べて全身の筋肉量が減少している可能性があります。筋肉量の減少が、体のバランス能力や歩行能力に影響し、転倒を起こしやすくなっていると考えられます。今回の研究では、40~50代の比較的若い年代から握力や体のバランスが低下し始めることが分かりました」と、藤田浩二先生。

女性の場合、骨折の危険性が高まるのは、握力22kg以下の人だそうです。

「ペットボトルのふたが開けにくい」「ドアノブを回しにくい」などと感じたら、握力が低下している可能性があります。

「万が一、同年代の人に比べて握力が低い場合は、階段の上り下りをする、いつもより多めに歩くなど、少しずつ運動習慣を増やしてみましょう。また、60代半ばからは良質なたんぱく質を摂るよう意識してください」(藤田先生)。

握力の計測は、整形外科や地域の保健所、スポーツジムなどで行える場合が多いので、一度測ってみましょう。

骨折のリスク(危険性)を高める要因

【握力】
女性の場合、握力22kg以下は骨折リスクが高まる

【BMI】
BMIが低いほど(やせている人ほど)、骨折リスクが高まる

【体のバランス】
同年代の平均値に比べてバランス能力が低いほど骨折リスクは高まる

【飲酒】
飲酒の習慣がある人ほど、骨折リスクが高まる

転倒する原因は?

【身体状態】
加齢などによって起こる体の変化

  • 筋力低下
  • バランス低下
  • 感覚低下
  • 視力低下

【精神心理状態】
ストレスや悩みがあるかどうか

【服薬状況】
薬を飲んでいるかどうか

【外的要因】
靴、衣類、床の状態など、さまざまな要素がある

手首の骨折(橈骨遠位端骨折)後にドミノ骨折を起こすリスクは…

女性1.69倍 男性3.21倍

手首の骨折を起こす人のうち、骨粗鬆症が原因の人は20~30%。その他の人は、転倒が骨折の原因です。

<ドミノ骨折とは?>
一度の骨折をきっかけに次々と骨折を起こすこと。高齢者の場合、背骨や大腿骨を骨折すると、3人に1人が、1年以内に再び背骨や大腿骨を骨折することが分かっています。

※出典 JAMA2007 東京医科歯科大学整形外科学 助教 藤田浩二先生らの研究より。
Fujita et al. Osteoporosis International 2019

取材・文/笑(寳田真由美)


藤田浩二(ふじた・こうじ)先生

東京医科歯科大学 整形外科学 医学部内講師。 東京医科歯科大学医学部卒。同大大学院修了。同大再生医療研究センター助教、広島手の外科・微小外科研究所などでの勤務を経て2015年より現職。専門は上肢外科(手外科)。


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