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2019年03月08日

「しっかりと靴紐しめても解(ほど)けゆくわたしの知らない私の心」2019年3月入選作品|老友歌壇

老友新聞2019年3月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)

一 席

しっかりと靴紐しめても解(ほど)けゆくわたしの知らない私の心

山岸 とし子

靴紐という身近な物に託した、心を締めてくれるもの。それでもほどけていく心。「わたし」と「私」を使い分けた繊細さも光ります。

二 席

払暁(ふつぎょう)の空を目指して白鷺がつぎつぎ発ちぬ暗き森より

福田 浩明

「払暁」とは明け方の意。古風なこの言葉が、次々と飛び立つ白鷺の清新なイメージを伝えています。

三 席

慎ましく生きて召されし人の通夜集える人の貌(かお)みな優し

青柳 忠良

原作「生きて逝きたる」は「いきて」の音が重なるので「召されし」としました。通夜に集う人達も又慎ましく生きている事が伝わります。

佳作秀歌

琵琶の花のかすかな香り漂い来(く)部屋のカレンダーわずかに揺れて

宮本 ふみ子

カレンダーも残り少なくなる冬に咲くびわの花。その花のような甘い雰囲気を湛えた一首です。

身体が不調和音を発しおりMRIのトンネルに入る

岸 慶子

不協和音ならぬ不調和音。「トンネルに入る」にも病を吹き飛ばそうとするユーモアが漂います。

冬休み孫子曽孫賑やかに囲む擂鉢とろろの濃さよ

大石 志津江

擂鉢のとろろが、賑やかで楽しいご飯どきの雰囲気をよく伝えています。

青空を背にし仕上げは鋏替え松の手入れの音冴えわたる

王田 佗介

松の手入れの鋏の音が、晴れた冬の空によく似合います。気持ちのいい一首です。

子や孫に甘えるような年になり淋しいような楽しい気持ち

横山 一雄

この3月で102歳になられるという横山さん。ご苦労された分、思いっきり甘えて下さいね。お元気になって良かったですね。

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