趣味
2018年01月09日
「メモ帳に鉛筆はさみ小袋に小さき抒情を書きとむる朝」2017年12月入選作品|老友歌壇
老友新聞2017年12月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)
一 席
メモ帳に鉛筆はさみ小袋に小さき抒情を書きとむる朝
櫓木香代子
思いついた時、手近にある物にすぐ書き留める。誰でも経験する事でしょう。短歌は「小さき抒情」の積み重ねかもしれません。
二 席
駆け乗りてきたる乙女がネックレス直す姿をガラスが映す
荻野 俊徳
最終電車かバスか、夜の車窓に、息を切らしながらネックレスを直す若い女性が映っている。日常の一コマながらドラマ性があり、印象的な作品です。
三 席
灰色の空に一瞬金色の光幾すじ日の沈む時
多田シズモ
日の沈む数分間の美しい光景をよく捉え的確に表現されました。自然の美しさの描写はなかなか難しいものです。
佳作秀歌
老い深むことの寂しさ 北国の秋のふるさと空蒼からむ
上田 昭子
深まる老いの中で、変わることのないものとしての故郷の空の蒼さを抱き続ける作者。
同じ空も園児が描けばさまざまに早や芽生えたる感性の色
鈴木 曻
空だから青色、とは限らない自由な子供の心。大人がとうに忘れてしまった新鮮な感性です。
紫に珠は光りて夜にあり源氏の世界へ古典の中へ
岡本 政子
紫式部という花の名に触発された作品。夜にその名の花を見て、『源氏物語』へ思いを馳せました。
歌会終えたどり帰りし玄関にカサブランカの咲き匂いみつ
塩谷千鶴子
カサブランカという華やかな名前が効果的です。歌会の軽い疲れも想像させます。
暁に鈴虫の声聞こえきて妻の遺影を持ち来て聴かす
松尾 勝造
明け方に聞こえた鈴虫の声。亡き妻にも聞かせたいという作者の気持ちが心を打ちます。
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