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医療と健康

2022年08月24日

「かかりつけ医」ってお持ちですか?

コロナが流行してもうすぐ3年になります。この間、皆様個人個人で感染防止はもちろんのこと、日常生活でも外出自粛やら三密防止やらとずいぶん大きく変化したと思います。しかし、大きく変わったのは私達の感染防止にもとづく生活だけでなく、実は日本の医療体制も大きく変わった、あるいは揺らいだと言っても過言ではありません。今年4月~5月にかけてのコロナ流行の第6波、あるいは7月から始まった第7波などでは全国で連日20万人を超える陽性者が出て、患者さんの数が急増したために多くの医療機関で(主に発熱に伴う)患者さんの受け入れが充分機能しなかったのです。皆様もよく御存知のように、日本の医療制度は世界的にみても非常に安心のできる制度と言われてきました。その根幹をなすのが国民皆保険と呼ばれる制度で、私たち国民は全て等しく保険料を支払うかわりに、万が一病気になった時に、自分の「好きな」診療所や病院などの医療機関を受診し(これを「フリーアクセス」と呼んでいます)、比較的安価な負担で、勝れた医療を等しく受けることの出来る仕組みのなかでずっと暮らしてきたのです。

日本の医療制度

ところが、今回のコロナの流行によって、容易に医療遍迫が生じ、フリーアクセスが出来なくなってしまったのです。いわば、これまで慣れ親しんできた(信頼してきた)医療体制に大きな欠点のあることが、実感されたとも言えましょう。現に今のコロナの第7波では、コロナによる発熱患者さんはもちろんのこと、コロナ以外の他の病気が急性に発症したり悪化した場合でも病院受診や入院治療を受けるのが難しくなっている状況なのです。ひどい場合には、救急車がなかなか来ない、さらには受け入れ病院がなかなかないために救急車の中で容体が急変するなどの最悪の事態が生じていると言われています。今後もこのような大規模な感染症が襲来することは充分予測されます。その時、わが国の勝れた医療体制を守るためにも病院への受診・入院を中心とした安心と信頼のあるフリーアクセスの維持はもちろん、保健所の役割も含めてどのような効果的対策が必要なのかを私たち自身で考えておく必要があると思います。

保険診療の流れ

もう一つの今回のコロナ禍で浮き彫りとなったのが「かかりつけ医」の問題です。国や自治体などは、コロナ感染の可能性のある発熱時には、まず「かかりつけ医」に相談を-と呼びかけてきました。しかし、誰でもがかかりつけ医を持っている訳ではありません。さらに、発熱した患者さんが「かかりつけ医」に診察を希望した際に、医師の方からかかりつけ医ではないと言われたケースもあったと言われています。いわば、患者側と医師側の「ミスマッチ」が起きていたのです。自治体ではコロナ流行下での受診はまずかかりつけ医でと盛んに言ってますし、国(厚生労働省)もコロナ以前から「一般的な外来はかかりつけ医へ。紹介を受けてから、大病院受診を」と、いわば外来の役割分担を進めてきた経緯もあります。

そもそも「かかりつけ医」ってどんな医師なのでしょう?日本医師会などは、かかりつけ医とは、「健康に関することをなんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介してくれる、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」としています。

しかし、実際にはどうゆう医師がかかりつけ医なのかよく判らない?とか、どうすればかかりつけ医となってくれるのか?とか、患者側と医師側との共通認識のズレや情報不足などで、十分に定着していないのが実態のようです。また医師(医療)の側でも「かかりつけ医」の登録制度の是非や人材確保、質の担保、データの一元管理などなど、難しい問題も沢山あるのです。皆様それぞれ、医療や医師に対する考え方は異なっているかも知れません。ただ、高齢者の場合には、慢性疾患で長い間病気とつき合ってゆくことが多く、普段から自分の健康のことを良く知ってくれている身近なお医者さんは、非常に大事な存在だと思います。特に今回のコロナの流行下のような異常事態の時にこそ、お互いに信頼できる関係性がもてるような場合には、「かかりつけ医」と言っても良いでしょう。是非一度皆さんも「かかりつけ医」のことを考えて頂きたいし、自分の健康と命を託するに見合った身近なお医者さんを見つけていただきたいと思います。

かかりつけ医

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 大学院 特任教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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