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医療と健康

2022年11月29日

帯状疱疹について

最近どういう訳か、帯状疱疹に罹った話をよく聞くようになりました。帯状疱疹は水ぼうそう(水痘瘡)と同じウイルスで起きる皮膚の病気です。恐らく皆様も子供の時に水ぼうそうに罹ったことがあると思います。全身の皮膚にぷくっと膨れた発疹が出来、発熱やかゆみを伴いますが一週間ほどで、やがてそれらは潰れてかさぶた(痂皮)となって剥がれ落ち、自然に治ってしまうウイルス感染症です。

実は子供の時の水ぼうそうは一週間程度で治るのですが、ウイルスは体内それも神経の内部に潜伏してしまうのです。その後成人あるいは高齢者になった時、過労やストレスなどで免疫力が低下すると、神経内に潜んでいたウイルスが再び活性化し、帯状疱疹として発生してくるのです。最近よく、帯状疱疹のことを聞くようになった一つの理由として、コロナ流行で、日常生活が制限され、外出を控える、友人・知人との付き合いが減らされるなどの有形無形のストレスが潜伏していたウイルスを活発化させているのかも知れません。実際、コロナ感染(COVID-19)と帯状疱疹の発症に関する研究もなされています。アメリカでの研究ですが、コロナに罹った50歳以上の人(約40万人)は、罹らなかった人(性や年齢をマッチさせた約157万人)に比べて帯状疱疹発症にリスクが約15%高くなっていました。また入院するほどの重症例ではこの危険性が21%まで上昇していたと報告がなされているのです。やはり、コロナ感染というストレスが帯状疱疹を発症させるきっかけとなった可能性が大きいですね。

帯状疱疹を発症すると、多くの場合は体の左右どちらかの神経に沿って、チクチクあるいはピリピリと刺すような痛みを伴う水ぶくれ(水疱)が多数集まって帯状に発症してきます。例えば私達の体(上半身)は肋骨によって胸(胸郭といいます)が形作つくられていますが、肋骨の内側で下方には肋間神経という神経が背骨からグルッと胸前面まで走っていますが、帯状疱疹をもたらすウイルスは肋間神経に沿って潜んでおり、それがストレスなどで活性化されると、その痛みや水疱は肋骨神経に沿ってまさに帯状に出現してくるのです。また顔面には顔面神経(三叉神経の一部)が耳あたりから顔に広く分布していますが、ウイルスはこの顔面神経の分布域に沿って発症と痛みをもたらすこともよくあります。帯状疱疹では時にズキズキとした痛みが強く、夜も眠れないほど激しい痛みが出ることも珍しくありません。さらに、このような痛みは皮膚症状(水ぼうそう)が治ると消えることが多いのですが、神経の損傷が大きい場合には皮膚症状が治った後も痛みが残って続くことがあります(これを「帯状疱疹後神経痛」と呼んでいます。)また顔面神経に帯状疱疹が出た場合、顔面神経麻痺が出現し、後々まで残ることもあり、これら後遺症はその後の生活に大きな不便や不快をもたらすこともしばしばあるのです。1980年代に非常に人気のあった女性のアイドル歌手の方も10年ほど前に帯状疱疹を発症し(顔面にも拡がる状態だったと言われています)、その後おそらく本人にとってはかなり苦痛な後遺症も残ったようで、現在に至るまで無期限の活動休止の状況となっていると報じられています。

日本人の場合、子供の時に水ぼうそうに罹り、その後生涯に渡って帯状疱疹の原因となるウイルスを神経節などに保有しているのは成人の90%以上と言われています。上で述べたように、加齢、過労、ストレスあるいは糖尿病やガンなどの(潜在的な)病気などによる免疫力の低下により帯状疱疹は発症するのですが、特に50歳代から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が発症するといわれています。

帯状疱疹の予防としては、まず出来るだけストレスを溜めないことです。日常生活でのストレスコントロールは難しい場合もあるのですが、少なくとも糖尿病などの持病を悪化させないことはとっても大切なことです。また適度な運動や良質な睡眠など日頃の体調管理に心掛けて頂きたいと思います。もちろんコロナに罹らないようにこれからも予防対策はしっかりとらなければなりません。また予防手段としてワクチンの予防接種もあります。帯状疱疹の発症が増し始める50歳を過ぎたら発症する可能性が高まるため、ワクチンの接種によって免疫力の増強を目指すものです。ただ、接種には不向きな方や種類のこと、あるいは医療保険が利用できないために自己負担として費用が掛かることなど注意すべき点もあり、かかりつけの医師などに相談してみることもお勧めします。

帯状疱疹についてです

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 大学院 特任教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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