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医療と健康

2021年03月08日

災害時に気をつけたいこと

我が国は地震や台風といった自然災害の多い国でもあり、そのような災害時における高齢者に対する対応も特別に重要と思われます。10年前に起きた東日本大震災の後も様々な自然災害が毎年起きています。つい最近も(令和3年2月13日)福島や宮城などを中心に震度6強の地震があり、多くの高齢者の方々が避難所に移られたのも記憶に新しい出来事でした。高齢者は乳幼児や障碍者の方々同様に、いわゆる「災害弱者」と呼ばれます。災害が発生したときの避難にかかる時間や正確な情報を得るまでの時間などが遅いことのほか、多くの方は複数の慢性疾患を有していることが多く、重症化しやすいという特性が挙げられます。

避難所などでの生活では、突然の環境変化が大きいことから、不眠や食欲不振などをはじめとして健康状態は悪化することが少なくありません。特に①高血圧、心臓病、糖尿病などの慢性疾患を有する高齢者では(常用している薬物を持ち出せなかったことから)服薬の継続管理が困難となる場合が多くみられること、②災害によるストレスのみならず、親しい人たちとの別離や避難所暮らしのストレスなど、累積的なストレスによって「うつ」をはじめとする精神的疾患の発症がみられること、③避難所での身体活動の低下による「生活不活発病」の発症がみられること、そして④最近の新型コロナウイルスの流行は言うに及ばず、インフルエンザや肺炎双球菌などの感染症の発生など、高齢者の健康状態に重篤な結果をもたらすことが多くの事例から知られているのです。したがって、災害時の避難所生活では、医療関係者のみならず一般の方々にも十分な高齢者に対する配慮と注意が必要となっています。特に「なんとなく元気がなく、ぼんやりしている」、「性格が変わった」、「趣味や関心事に興味を失っている」、「言葉少なになり、周囲から孤立している」などの兆候があれば、危険なサインですので、それらに早く気付くとともに、適切な対応が必要となります。

災害時に「生活の不活発化」を生む原因とそれらの相互関係

「生活不活発病」についてー避難所生活のみならず自粛生活でもー

避難所での生活では不活発な状態が発生しやすくなります。生活上の不活発、すなわち身体を動かして活動する時間の著しい低下によって様々な心身の機能の低下(医学用語では「廃用症候群」といわれる状態)が発生し、いわゆる「生活不活発病」と呼ばれる状態となってしまいます。避難所生活では、どうしても生活するスペースが限られることや、それまでの自宅での家事や庭木の世話、ご近所や買い物へのお出かけなど、日常のありとあらゆる活動が制限されてしまいます。さらに避難所でのお世話する方やボランティアの方などが高齢者の方を大切にするあまり、すべてのことにお世話をしすぎるような状況となってしまうことがあります。このようないわば過剰なお世話は高齢者の生活のための活動や身体を積極的に動かすことにはむしろ逆効果となってしまいます。高齢者に十分注意することは必要なのですが、出来るだけ、高齢者本人の活動を阻害することなく、支援するような見守りが重要なことはお分かりかと思います。

この生活不活発病は実は災害時の避難所生活だけに起こるものではありません。今日もなお慢性的に続いている新型コロナウイルス流行による自粛生活にも当てはまることなのです。感染予防の観点から、自宅に閉じこもりきりとなり日常の生活の活動や身体の活動が著しく不十分となりやすい現在でも全く同じように生活不活発病が忍び寄ってくる可能性があるのです。

万が一、生活不活発病を発症しますと、筋力の低下や関節の硬化(固まって動きが悪くなること)を始め四肢の活動能力(体を活発に動かす能力)がまず衰えてきます。さらに心肺機能・消化器機能の低下をはじめとして、体調を整える自律神経の機能低下、知的活動の低下、うつ状態など様々な症状が出現することが知られています。一度発症するとなかなか健康な状態に戻ることが難しくなり、放置すると確実に進行し要介護状態へと移行してしまいます。したがって、出来るだけ生活の活発化を維持し、不活発化のサインを早期に発見するよって予防・回復を図ることが大切です。今日のような自宅での自粛生活であっても、毎日「軽め、コマメに30分。水分補給を忘れずに!」という標語をしっかり覚えておきましょう。日常のちょこまかした体の動かしが生活不活発病予防の第一歩なのです。厚生労働省や多くの自治体などからも、避難所生活を中心として、生活不活発病の発症を防ぐためには以下のような点に注意が必要とされています。

  • 毎日の生活の中で活発に動く(横になっているより、なるべく座る)。
  • 動きやすいよう、身の回りを片付けておく。
  • 歩きにくくなっても、杖などで工夫して歩く(すぐに車椅子を使うことは避ける)。
  • 避難所でも楽しみや役割をもつ(遠慮せずに、気分転換を兼ねて散歩や運動も)。
  • 「安静第一」「無理は禁物」と思いこまない(病気の時は、どの程度動くか相談を)。
  • 感染症(特にコロナ)予防のために3蜜(密接、密集、密閉)を避ける。

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 老年学総合研究所 所長、大学院教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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