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医療と健康

2021年03月31日

「睡眠」

1.高齢期の睡眠の特徴

「春眠暁を覚えず」は、春の心地よい朝寝坊をうたった有名な詩ですが、皆様は快適な睡眠を楽しんでいますでしょうか?実は年をとると健康な高齢者の方でも、睡眠が浅くなり、よく眠れない方が多くなると言われています。今回は、コロナ禍の中でも快適な睡眠のための秘訣について紹介することにしましょう。

睡眠は加齢の影響を受けることは間違いない事実です。睡眠状態を調べる機器(「睡眠ポリグラフ」といいます)で高齢者の睡眠を調べると若い人に比べて、次のような特徴があります。

  1. 高齢者では途中で覚醒(目覚めること)の回数が多くなる。
  2. 覚醒している時間が長くなる(一度目覚めると、なかなか寝られなくなる)。
  3. 睡眠時間が短く、深い眠りが減少し逆に浅い眠りが増加する。

また睡眠の総平均時間の調査(総務省統計局2016年)によれば、高齢になるほど生活行動別の睡眠総平均時間が増加していています(15歳以上;471分、65歳以上;499分、75歳以上531分)。さらにトイレなどで睡眠途中で覚醒することも多くなっています。これらの高齢者での睡眠の特徴の結果、若い時のようにしっかりした熟睡感のある快適な睡眠を得ることが難しくなるのです。そのために、高齢者では、昼寝やうたた寝など、日中の睡眠がしばしば見られるようにもなります。

2.高齢期の睡眠障害

年をとると誰でも睡眠の質が変わり、上で述べたように、総じて眠りが浅くなり、熟睡感が少なくなります。そのために、不眠を自覚する人の割合は増えてしまします。さらに、高齢期では以下のような病気や障害が睡眠を妨げ、不眠をもたらすことも知られています。

  1. 夜間の頻尿(トイレ)、身のかゆみ、脚などのツリ、ムズムズ脚症候群。
  2. 睡眠時無呼吸症候群(特に肥満の男性)。
  3. レム睡眠行動障害(夢の中で大声を出したり、手足の異常運動の出現)。
  4. 心理的ストレス(退職、親しい人との別離、孤独、不安など)。
  5. 薬剤による不眠・睡眠障害(特に睡眠薬の不適切な服用など)。

中でも、様々なストレスが不眠・睡眠障害の大きな原因となります。例えば、私が高齢者の診察で経験した方は、60歳代の女性の方です。その方の場合、御主人が退職後、フォークダンスの趣味が昂じて趣味の仲間との付き合いが頻繁となり、各地での催し物やダンスの大会などでしょっちゅう家を空けるようになったことで、逆に奥様の方が徐々にストレス、特に孤独感を募らせたようです。その影響もあったのでしょうか。めまいや耳鳴りなどがひどくなり(メニエール病といいます)夜間の不安感や孤独感が募って不眠となったようです。

この方の場合は健診にご主人も来ていましたので、ご主人にも協力をお願いし、専門医を紹介した例もありました。ストレスとは他者には判らない本人の心身への大きな負担感や疎外感、あるいは歪みのような状態なのですが、それによって引き起こされる様々な負の状態(ストレス反応といいます)が出現しますが、不眠はその最たるものと言っても過言ではありません。

3.良い睡眠が認知症を予防する!?

高齢期の睡眠不足は、生活の質(QOL)を低下させることは皆さんもよく御存知と思います。最近、良質な睡眠が認知症、なかでもアルツハイマー病を予防する可能性があることが判ってきました。

アルツハイマー病の原因のひとつとして、脳内にアミロイド・ベータ(Aβ)と呼ばれる異常なタンパク質が蓄積し、脳内の神経細胞を障害するために記憶などの大切な脳の機能(認知機能)を低下させ、ついには認知症を発症させると考えられています。通常脳内で生じたAβは夜間の睡眠中、特にレム睡眠と呼ばれる深い睡眠中に脳から血液中に排出され、肝臓に運ばれて無毒化されています。しかし、不眠や睡眠障害があると、熟睡することができず、そのためAβの脳からの排泄がうまくゆかずに脳内に蓄積されやすくなってしまいます。このようにAβの排出が低下し蓄積することがアルツハイマー病を発生しやすくなると考えられているのです。

最後に良質な睡眠を得るためのコツですが、一番のおすすめは「昼夜のメリハリをつけること」です。勿論、不眠や睡眠障害での原因が判っている場合にはかかりつけ医や専門医に相談し、治療の必要なことが大切ですが、特にはっきりとした原因のわからない場合、一番の基本は日中は外に出て太陽の光の下で、できるだけ身体を動かしてみることです。親しい人や知人などとおしゃべりを楽しむのもよいことです。昼寝は20~30分程が最適とされています(あまり寝すぎるのはかえってマイナスになります)。夕食後はすぐに床に就かず、家族との団らんや趣味の時間を過ごすことも大切です。寝床に就いて20分以上寝付けない時には、いったん起きて居間などへ移動し、読書などで再び眠くなってから寝床に入りましょう。またたとえ夜間十分眠れなかった時でも、朝の起床時間は同じにして、いわゆる体内時計のリズムを保つことも重要なポイントです。このように昼と夜のメリハリをつけて、生活のリズムを保つことが大切です。コロナ禍でややもすると規則的な生活が乱れがちになるかもしれませんが、昼夜のメリハリをつけ、昼は明るい日の光の下で頭と体を働かせ、夜はゆっくり過ごして快適な睡眠を保つことが、最も重要なポイントになります。

良質な睡眠を得るためのコツ

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 老年学総合研究所 所長、大学院教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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