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医療と健康

2021年04月28日

「閉じこもり」を避けましょう

1.コロナ禍で外出する頻度が減少した。

高齢者の方が外出しなくなり、自宅に引きこもってしまうことを「閉じこもり」といい、よくニュースなどでも取り上げられています。また今日の新型コロナ流行の中で、外出自粛が叫ばれ、外出することがなんとなく憚れる雰囲気になっていて、「閉じこもり」が増えることが懸念されています。

最近、日本能率協会が実施した「高齢者のライフスタイル」という調査は、2018年のデータとコロナ禍で実施された2020年10月のデータを比較したデータが示されています。その結果を見ますと、高齢者全体では1週間当たりの外出頻度は平均で5.0日から4.5日とおよそ半日の低下が示されています。また1週間毎日外出する人は50%から39%へとかなり大きな低下を示していることが明らかとなりました。このような外出を控える傾向は(もともと外出頻度の高かった)60歳~70歳代の方々に低下が目立ち、中でも女性の方々では5.2日から4.3日とほぼ1日の低下が示されていました。このような外出自粛のせいでしょうか、「自分自身の体力の自己評価」も低下し、特に男女とも60歳台の方々でその傾向が大きかったと報告されています。

一方で、「普段の健康への気遣い」や「健康や老化防止への金銭投資意識」、そして「趣味として散歩やウオーキングをする」などは上昇していたと報告されています。これは、新型コロナの流行にあって、外出は控えられている一方で何とか自分の体力や健康を維持しようとする前向きな気持ちや様々な努力をしていることをうかがわせる結果だと思われました。

2.「閉じこもり」がもたらす障害

高齢者の「閉じこもり」には2つのタイプ(種類)が知られています。一つは病気などの身体的理由で移動能力(歩行能力)が衰え、そのために外出が思うようにできないタイプ(これをタイプIといいます)。そしてもう一つのタイプが、移動能力や歩行能力は維持されているにもかかわらず、何らかの理由によって外出頻度が減っているタイプ(これをタイプIIと呼んでいます)で、タイプIよりも多くみられています。東京都健康長寿医療センターの研究グループの調査では、1,500人ほどの高齢者を2年間観察し、その間に閉じこもりの高齢者における歩行障害状態(ロコモ)、要支援状態、そして認知機能障害の問題を発生するリスク(危険性)を明らかにしました。その結果によれば、タイプIIの閉じこもり、すなわち、歩行能力はちゃんとしているにもかかわらず外出していない高齢者は、(閉じこもっていない)健康な高齢者に比べて、歩行障害を発生するリスクは3.2倍、要支援状態となるリスクは2.9倍、そして認知機能の障害発生リスクは3.1倍高くなることが示されたのです。総じて言いますと、ちゃんと外出できるのに閉じこもった状態が2年間続くと様々な生活上の困難が、普通に外出している高齢者よりも、およそ3倍も高くなるということを示しているのです。現在のコロナ禍にける外出の自粛というのは、まさに「閉じこもりタイプII」の状態と同じということができます。いかに危険な状態かをご理解いただければと思います。もちろん、大声で喚く酔客のいる居酒屋や、狭い空間で唾を飛ばして歌うカラオケ店などは是非とも避けるべきでしょうが、日常の散歩や家族などの少人数での会食、親しい人たちと十分換気とマスクに気を付けたお茶会などは感染の大きなリスクにはならないようです。今後高齢者を優先にしたワクチン接種が進めば、より安全性は高まるでしょう。感染防止に十分気を付けながら、体をこまめに動かし、屋外での散歩や他者との交流などは十分楽しんでほしいと思います。

3.「閉じこもり」+「孤立」の害

東京都健康長寿医療センター研究所のグループは、「閉じこもり」+「孤立」の状態がもたらす害についても注意すべき研究を示しています。それは、外出頻度が低下した「閉じこもり」だけでなく、社会的なつながりの低下した状態すなわち「社会的孤立」が合わさった状態の高齢者が、そうでない(「元気な」状態の)高齢者に比べ、4年後や6年後に介護保険のサービスを受給する状態(要支援・要介護状態)になる危険性や、死亡率に及ぼす影響を調査した結果を明らかにしています。その結果をみてみましょう。「閉じこもり」も「孤立」もない元気高齢者に比べ、「閉じこもり」があったり「社会的孤立」があったり、あるいはその両方(「閉じこもり」+「社会的孤立」)があったりした場合には、介護保険サービスを受けるほどの障害を生じる可能性は2倍程度に高くなり、さらに6年後の死亡率では元気高齢者に比較し死亡率は約2.2倍も高くなっていることが明らかにされたのです(図)。

「閉じこもり」は容易に「社会的孤立」とセットになる可能性が高いと思われます。しかし今日では電話だけでなく、パソコンやスマートフォン(スマホ)からのメールやSNS(ライン、ツイッター、インスタグラム等々)によって親しい人たちといくらでも(外出しない場合でも)交流することが可能な時代となっています。ぜひ皆さんもこれを機会にパソコンやスマホで皆さんと繋がりができるように、自在に使いこなせるよう挑戦してみてはいかがでしょうか?

(かくいう私もこのコロナ禍で大学の講義や講演、会議などほとんどがパソコンを用いた遠隔(リモート)の仕事となりました。慣れぬパソコン操作などで四苦八苦しましたが、今日ではようやく慣れ、講義などでは若い学生さんを相手に、ワクワクしながら新しい技術を楽しんでいます。まさに「災い転じて福となす」で、新しい世界が開けたように思っている今日この頃です。)

外出頻度の低下と社会的孤立

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 老年学総合研究所 所長、大学院教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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