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2018年12月14日

樹の生命~京都御苑「原始の森」の生命力の強さは…<市田ひろみ 連載31>

夕立がなつかしいと言っていたら、7月から8月にかけて、これでもかの雨。こんなにすごいにわか雨を夕立というのか。
夕方になると、燃え立つような夕立はとうとう台風5号にふくらんで、またまたあちこちで水害をもたらした。
私がなつかしがっていた夕立。焼けた京都の露地をてきとうにしめらせてくれたが、風情もどこへやら。

ゲリラ豪雨、誰が名付けたのか、夕方になると少しずつ暗くなってきて、稲光りがいくつか光るし、雷鳴がとどろく。まさに地響き。はげしい雨足が京都御苑の大木をゆるがす。

20メートルはあろうかという楠の木、いちょうなど、台風5号にあおられて、荒海のようにゆれている。直径40~50センチもあろうかという大木が折れそうだ。私の家のテラスにも、折れた枝の先がとんで来る。

京都御苑には緑豊かな古来の原始の森がある。
嵐の日は恐ろしいが、年中、京の季節とともに美しい自然が時を知らせてくれる。
でも、ひとつだけ気になっている楠の木がある。いつの頃からか、もうすでに30度くらい傾いている。強風の度に折れないかと気をもんでいる。
ゆっくりと進む台風の影響をもろにうけて、かたむいたままその楠の木は豪雨に立ち向かっている。

その生命力の強さ。
楠の木は、台風5号の豪雨もかたむいたままくぐりぬけた。そして今日もまた、いつでもかかって来いとばかりに、天に向かっている。

きものには吉祥柄というものがある。不老長寿につながる、おめでたい模様のことだ。
祝事につかわれる松竹梅もそうだ。松は寒に耐えて緑を保つ。竹は一日に30センチものびる。梅も寒に耐えて花を咲かせる。
また、桐・竹・鳳凰も吉祥文だ。
鳳凰は空想の鳥で、名君の治政に桐の木に住んで、その実をついばんで生きるという。乱世の世には現れないのだ。
振袖、留袖などの正・礼装にはよく使われる。天皇家にも、一般庶民の衣生活の中にも、文様に対する祈りとともに、守り伝えられてきたのだ。

ところで
「桜の模様は4月しか着られませんか?」
「紅葉の模様は秋しか着られませんか?」
きものや帯の文様を気にする人がいる。たしかにきものには季節感があるし、7月、8月は絹紗麻などのうすもの、6月、9月は単。10月、11月、12月、1月、2月、3月、4月、5月は合せと、素材も季節ごとの意味がある。
きものにともなって、帯、帯じめ、帯あげも四季にあわせる。
着る人にとっても、夏は涼しげに、また見る人にとっても涼しげな方が良い。ゆかたを上等な着こなしに見せようと、長じゅばんを着てゆかたを着る人がいるが、ナンセンスだ。つまり、着る人と同時に見る人のことも考えてほしい。
五山の送り火には、ゆかたを楽しむ人が多いが、この頃は京料理をきもので楽しむ人が増えてきた。むつかしいことは言わず、気分転換にきものを着て、もう一人の自分になってね。
(老友新聞本紙2017年10月号に掲載された記事です)

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市田 ひろみ
  • 服飾評論家

重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。

書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。

テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。

二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。

現在、京都市観光協会副会長を務める。

テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。

著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。

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