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医療と健康

2020年10月23日

ピンピンコロリは本当にあるの?

高齢者の方の中には「ピンピンコロリ」で死にたいと思っている方が多いようです。しかし、これまで多くの高齢者(特に後期高齢者)の方々の健康の実態を見てきた私からすると、死ぬ直前までピンピンと元気で、ある時コロリと大往生するなどという死に方は非常に少ないものです。むしろピンピンコロリは稀と言っても過言ではありません。実際に、ある時まで、特に大きな病気や障害もなく元気に過ごしていた高齢者が、何かの病気で突然倒れ、救急車などで病院に搬送され、その急病によって2~3日以内に死亡するような例は、たかだか3~4%と言われています。逆に言うと、9割を超える圧倒的多数の高齢者は、後期高齢者(75歳以降)になれば、誰もが多かれ少なかれフレイルの状態となり、さまざまなかたちで障害が現れ、日常生活に不便を感ずるようになり、周囲の人々からの支援が必要となり、介護保健のサービスを受け、多少の期間はベットでの生活となって人生を終えてゆくものです。

後期高齢期に入り、心身のさまざまな機能が衰え、日常生活での支援が必要となることは決してダメなことでもなく、異常なことでもありません。ごく普通のあたりまえのことなのです。「ピンピンコロリ」の対の言葉は「ネンネンコロリ」だそうですが、年を取れば誰でも多かれ少なかれネンネンコロリを経て死んでゆくものなのです。

ピンピンコロリは多くの高齢者の願いなのかも知れません。どうして皆さんはネンネンコロリではなく、ピンピンコロリなのでしょうか?おそらく、その理由は「家族や周囲の人に迷惑(!?)をかけたくない」とか、「他人様(よそさま)の世話になりなくない」といった理由があげられるようです。なんという遠慮深さと謙虚さなのでしょう。でも、よ~く考えてみると、人間誰でも赤ん坊の時は親や周りの人々の助けがないと生きては行けないのです。生まれてからどれほどの長きにわたって親が面倒を見るのでしょうか?最低でも子供が小学校に上がるくらいまでは、全ての生活を世話するのが普通でしょう。同じように年老いた時にも生活の世話が必要となるのはある意味当然なのです。子供や周りの人々の助けがないと生きて行けないのも人間だからなのです。子供の時期と晩年の時期は、それぞれ親や子や周囲の人々さらには社会全体からのお世話や支えがあって自立を維持してゆくことは、当たり前の時期だと思うのです。

戦後、日本全体が国民皆さんの頑張りのおかげでこれだけ豊かな社会となり、長寿化を楽しめる時代となり、圧倒的多数の人々が、健康に高齢期を迎える社会を築き上げてきたのです。そんな立派に勤めを果たしてきた高齢者が、家族や他人様に助けや支援を受けることを遠慮しなければならない社会って、いったいどんな社会なのでしょう。これまで一生懸命汗水流して家族のため、社会のために働いて、作り上げてきたのはそんな社会を作るためだったのでしょうか?

長い人生の晩年には、誰でも皆んな、ある程度の要介護状態になることは当然のことなのです。大切なことは、宝くじに当たるようなピンピンコロリを望むことではなく、少しでも長く自立した生活に向けて努力し、どうしても難しくなった時は自分が納得した介護を受け入れ、障害と付き合うコツを覚え、少しでも人生を前向きに楽しむことが大切だと思うのです。

もちろん、長年にわたるネンネンコロリを推奨しているわけではありません。人生100年と言われる時代になって、中年期から(時にはもっと若い時期から)人生100年を見据え、生活習慣病を予防する健康生活に努め、高齢期になって足腰の衰えを感じるようになったら、それこそネンネンコロリ防止のためにできるだけ足腰や全身の筋力を維持するような自助努力を続けることは当然のことです。でも100年近く生きてゆくと最後はどうしても心身は衰えるものです。その時には誰にも遠慮することなく、これまでの自分の努力と頑張りをぜひ自分でも褒めたいと思いませんか?そして、誰にも遠慮することなく、しっかり自分を支えてもらいましょう。家族が大変な時には、わが国には介護保険制度という立派な公助の仕組みも整っているのです。介護保険とその利用については、ぜひ皆さんも一度学んでみてください。皆さんの住んでいる市町村の「地域包括支援センター」というところで気軽に相談することもできます。たとえネンネンコロリでも安心して生活していく事が決して不可能ではないことを知っていただきたいと思います。


ピンピンコロリ地蔵(長野県高森町、瑠璃寺境内)

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 老年学総合研究所 所長、大学院教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
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老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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