天の位

世界で一番平和な国へ
羽をやすめに渡り鳥

王田　佗介

実相は必ずしもそうではないかも知れないが、日本を世界で一番平和な国と言い切ったことが作者の眼であり渡り鳥のこころだ。羽をやすめる光景が見えてくる。

地の位

帰省なつかしケンチン汁が
腹の底までしみ渡る

飛田　芳野

ささがき牛蒡や豆腐、芋など具だくさんの嬉しさ。湯気やあたたかさがそのまま故郷の味として胸にしみ渡る。

人の位

小鳥囀る小さな庭に
今日も至福の共白髪

鈴木　昇

作者の人生を祝福したい。こうありたい、と思ってもなかなか辿りつけない境地とご好運だ。

十　客

音を頼りにボールを蹴って
パラリンピックの爽やかさ

福田　浩明

いくらとんびが自惚れたって
所詮勝てまい鷹の舞

古賀　房子

遠い思い出レイテの島に
征った兄貴の帰る夢

高木　まつ

河川工事のクレーンを見上げ
通水式待つ夢に居る

手銭美也子

今日はあの人立ち寄るだろか
期待し並べる朝の市

大西　和子

年の終わりにピカピカ磨く
油ギトギト換気扇

向井智恵子

演歌カラオケ楽しく歌う
シメに歌うは童唄

山田　浩司

仕舞い風呂ゆえ唄まで出ぬが
のんびり気ままに流す汗

岩崎ますゑ

杖を頼りに手を取り合って
絵画眺めに文化の日

葛西ヤヨヒ

青く静脈浮き立つこの手
生き生きサロンのボランティア

仲野まつ乃