趣味
2020年07月06日
「紫陽花の小さき莟があまた付くわたしが住まねば誰もいぬ家」2020年7月入選作品|老友歌壇
老友新聞2020年7月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)
一 席
紫陽花の小さき莟があまた付くわたしが住まねば誰もいぬ家
山岸 とし子
紫陽花の描写と、一人で暮らす家を並列する事で、家への、ひいては自分への慈しみをさり気なく表現しました。
二 席
夕暮れは好きなひととき一面の菜の花畑のおぼろおぼろに
飛田 芳野
「夕暮れは好きなひととき」ときっぱりと言い切った潔さ。三句以降の表現が春の気分を十分に伝えます。
三 席
陸橋を渡る和服の婦人ありふわりふわりと日傘浮かせて
王田 佗介
「陸橋」という設定が効いています。下から見上げている事で、和服の婦人の姿が一枚の絵のように映りました。
佳作秀歌
木仏の秘めし謎をば語りゆく僧の声染むる達身寺の堂
岸 慶子
その仏様にはどんな謎があったのでしょう。読者も思わずひきこまれます。
浅草の境内で遊びし幼き日瓢箪池も月も朧に
倉澤 登美子
今は朧になってしまった子供の頃の浅草。「朧」という言葉が春の気分と共に読者の郷愁を誘います。
夕光(ゆうかげ)にひと時華やぐ桜花静かに闇がせまりて包む
荻野 徳俊
夕方の薄闇の中の桜の妖しさを伝えて秀逸です
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