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2020年07月03日

梅雨時の体調管理について

旧暦6月の月和名は「水無月」。字面からすると雨とは無縁な月に感じますが、「無」は「〜な」とか、「〜の」など助詞への当て字となり、本意は「水の月」ということになります。そのようなわけで、世はまさに雨の季節、梅雨明け宣言の沖縄を除いて、日本全国、湿気が高く蒸し蒸しとした梅雨空が続きます。最近の梅雨は、温暖化の影響もあるのか、突然の豪雨に見舞われることが多くなりました。

天候に左右される農家さんにとって、雨は恩寵と災の両方の意味を持つものとして捉えられています。夏野菜や稲の成長には、この雨が必要不可欠ですが、一方で病害虫や植物の病気が流行るのもこの時期の特徴でもあるのです。

梅雨の長雨は、農作物ばかりではなく、人間の健康にも「諸刃の剣」として影響し、老若男女問わずこの時期なると様々な体調不良を訴える方が多くなります。

乾燥を嫌う「肺」はこの時期、適度の湿り気で潤うため「風邪」には罹りづらくなります。しかし、湿気(漢方・中医学でいう「湿邪」)が長時間体内に居座ると、体内に「べっとりの粘りつくような湿」が溜まってしまいます。このような「湿」を嫌うのが「脾」と言う臓器で、これが故に身体には変調が起こりやすくなります。なお、東洋医学でいうところの五臓(肝・腎・脾・肺・心)は、西洋医学で言う五臓(肝臓・腎臓・脾臓・肺・心臓)の機能とは大きく異なります(説明は紙面の都合上省略します)。

例えば、身体の水分バランスが崩れて起こるような頭痛、目眩、耳鳴り、リウマチなども梅雨時に悪くなったりしますし、籠もってしまった湿気と熱が不眠、不安、健忘、激昂、悲観に代表される鬱症状を引き起こします。我が国は湿潤多雨の気候でもあるので、この様な体質を持った人が多いようです。

最近では、新型コロナウイルスによる外出自粛や生活様式の激変で「コロナ鬱」になる人が増えていると話題になっていますが、梅雨時の「湿邪」はこれを悪化させてしまう大敵と言えます。

ちょっとした鬱症状でも放っておくと、様々な疾患の原因となってしまうので、気をつけて生活したいものです。
予防するのは、適度な温度管理と除湿のもと規則正しい生活と健康的に身体を動かしたりして汗を流すと良いのですが、昨今のコロナ感染症の状況から、これもままならない場合があります。そのような時は、食から病気になるのを予防していく「食養生」も策の一つと言えましょう。漢方や中医学には「先防未病」と言う考え方があり、病気は未然に防ぐことが重要と説かれています。この中には「食養生」の考え方も入ってきます。幾つかの例を紹介しましょう。

イライラしたり、怒りっぽい、お腹が張ったり、ため息をつきやすく、喉が詰まったり締め付けられるような感じがある人は、身体のエネルギーである「気」の巡りが悪くなる「気滞」の可能性が高いです。いわゆる自律神経失調症がこれにあたります。この原因は憂鬱や不安感が長時間続くことにあります。なんと言ってもリラックスが一番なのですが、ストレス状態にある人に「リラックスしろ」と言ってもなかなか解決は難しいものです。

食養生でお勧めの食材は、まぐろ、そば、しそ、しゅんぎく、セロリ、たまねぎ、ピーマン、ラッキョウ(食べ過ぎに注意)、きんかん、みょうが、グレープフルーツ、ゆず、ジャスミン茶などが良いでしょう。

顔色が悪く、目の下にクマができやすい、肩こり、生理痛がひどい、下肢に静脈瘤があるなどに心当たりのある人は、血液の巡りが悪い「瘀血(おけつ)」と言う症状と考えられます。食養生からは、いわし、さば、さんま、ザーサイ、たまねぎ、ちんげんさい、なす、菜の花、パセリ、ふき、みょうがなどを使った食事が良いとされます。

雨の日になると身体が浮腫んだり、身体が重い、また口の中が粘っこくなったり、粘り気の痰が出るなどは体内の水分代謝が悪い「痰飲(たんいん)」と言う症状と言えます。先にも書きましたが、これは「湿」から来るもので、体内でこびりついてしまうと「痰飲」となり、後々重い病気の原因となるので気をつけなければなりません。症状によっては、消化に悪い食材は避けたほうが良いとされます。このような場合にお勧めなのは、こんにゃく、さといも、たけのこ、あさり、こんぶ、のり、はまぐり、わかめ、あずき、えのきだけ、きんかん、梨、びわ、烏龍茶などと言われます。

現代はストレス社会で、これにコロナ禍が拍車をかけてしまっています。したがって、上記の「気滞」に加え「瘀血」や「痰飲」が同時に発症している例が多いようです。

食養生は人の三大欲求の一つである食欲をうまく使った方法と言え、病中・病後でも手軽にできる方法でもありますが、先述した鬱症状や持病の症状が顕著な場合には先ず、かかりつけの医師や心療内科の受診をお勧めします。

高野 文英 教授
  • 高野 文英 教授
  • 日本薬科大学薬学部薬学科教授
  • 東北薬科大学大学院修士課程修了、東北大学教務職員(博士(薬学)取得)
  • 天然薬物から薬理学的機能性がある成分を見出し探索その化学構造を明らかにする研究を専門としている。講義では、動植鉱物から見出された医薬品、あるいはそれを基礎として合成された医薬品を講義し、天然からの医薬品探索の面白さを伝えている。
  • 日本薬科大学 公式サイト
    https://www.nichiyaku.ac.jp/

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