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医療と健康

2022年07月27日

熱中症を防ぎましょうー筋肉量と水分の大切さー

また暑い夏になりました。
今年は6月後半の梅雨も明けぬうちから連日の猛暑日となり、熱中症で救急搬送される人が相次ぎました。さらに7月に入ってからはコロナ流行第7波とも思われるほどに全国で感染患者の数が急上昇しています。高齢者の中には、また外出を自粛や運動不足で体力が落ちている方もいらっしゃるかもしれません。さらにマスクをこの猛暑の中で付けていると、皮膚からの熱が逃げにくくなり、気づかないうちに脱水状態がすすみ、熱中症になるという危険性が高くなることもあります。実際、コロナも熱中症も発熱が主たる症状ですので、病院などに受診した際に医療機関側はまずその発熱がコロナか否かを厳密に判定しなければなりませんので、いわば厄介な一手間がかかることになるのです。ということで、今回は(若い人とは異なる)高齢者の熱中症について、注意点や予防方法などについて報告します。

熱中症というのは、暑い状況の中で発汗や皮膚温度などによる体温調節がうまくゆかず、体温が上昇して体内に熱がたまってしまう状態をいいます。猛暑日の続く夏場では、気温・湿度ともに高くムシムシとした不快な気候の中で、適切なエアコンも使用せず締め切った室内で過ごしているだけで高齢者の方などには容易に脱水症から熱中症が出現するのです。実はあまり知られていないかもしれませんが、高齢者が脱水状態になりやすい一つの原因は筋肉にあるのです。このコラムでも以前紹介しましたが、高齢者では加齢に伴う筋肉量の減少、すなわちサルコペニアが多かれ少なかれ出現します。特に先に挙げたようにコロナ流行で外出自粛などがあると、日々の運動や活動の低下によってますます筋肉量は減ってしまいサルコペニアへと進行してしまうのです。実は身体の中で、最も水分を多く含んでいる臓器が筋肉なのです。ですので、サルコペニアになると水分を十分にためておくことが出来なくなってしまいます。そもそも高齢者は体内の水分量が少なくなっているのです。例えば体内の水分量が最も多いのは赤ちゃんです(水分率80%)。一般の成人でも水分率は60%くらいはあるのですが、高齢者では50%程度に下がってしまうのです。赤ちゃんと高齢者の肌のツヤツヤ感が大きく違うことは皆さんもよくご存じでしょう。ですので、高齢者は若い人たちよりも余分に水分を取る必要があるのです。さらに高齢者では暑さやのどの渇きを感じにくくなることや、(新陳代謝が下がっているために)汗をかきにくくなるなどの特徴があります。さらに加えて、暑い夏場ではどうしても食欲が低下し、本来食事でとるべき水分や塩分が不足するといったことなど、高齢者の脱水症や熱中症になる危険性は数多くあるのです。少しでも「喉が渇いたかな」と思ったら、必ずお水(できれば少し塩分を含んだ梅昆布茶や市販の電解質成分を含んだ経口補水液)を飲むように心がけてください。

高齢者の熱中症予防のためには、きちんと3食を取り(これで水分は約1リットルが取れます)、さらに最低でも1.2リットルの水分補給が必要とされています。今述べた経口補水液(ゼリーのタイプもあります)はもう家庭の必需品といってもいいと思います。水分補給のタイミングはできればこまめにとることをお勧めします。特に朝起き1杯のお水は血液を正常な状態にしてくれますし、就眠中は汗が出ますので寝る前の1杯も大事ということになります。

高齢者の熱中症予防のためには、水分補給はもちろんですが、体内の水分貯蔵庫として筋肉量も維持しなくてはなりません。骨格筋量を増やすためには、どうしても筋トレが必要となります。自宅でもエアコンで快適な温度にしたうえで、筋トレをしていただきたいのですが、高齢者には関節などに負担をかけずに筋肉増強効果が期待できるゆっくりとした筋肉運動「スロートレーニング」が勧められます。このスロートレーニング(スロトレ)は見た目はゆっくりとして楽そうに見えるのですが、実は通常の素早い動きのトレーニングよりもむしろハードな運動なのです。ゆっくりと体を動かすことから、筋の持久力が高まるとともにバランス能力も鍛えられるのです。ゆっくりした動きですので、安全性も高いと思われますが、例えばスクワット動作の場合には椅子につかまって太ももの筋肉(大腿部)を鍛えるなどの工夫もよいでしょう。自分がいま鍛えている筋肉が少し辛くなるくらいの強さでやってみましょう。このようにして筋量や筋力をできるだけ保ち、こまめに水分補給を心がけるのが高齢期の脱水予防・熱中症予防の第一歩ということができます。

熱中症を防ぎましょう

熱中症予防のポイント

からだづくり

  • 「水分を」こまめにとろう
  • 「塩分を」ほどよくとろう
  • 「睡眠環境を」快適に保とう
  • 「丈夫な体を」つくろう

暑さに対する工夫

  • 「気温と湿度を」気にしよう
  • 「室内を」涼しくしよう
  • 「衣服を」工夫しよう
  • 「日差しを」よけよう
  • 「冷却グッズを」身につけよう

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 大学院 特任教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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