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2021年06月15日

人間ドックで「肝血管腫」と診断。気になる晩酌は…?

「肝血管腫」と診断されたのですが…

65歳の男性です。先日、人間ドックを受診したところ、「肝血管腫」と診断されました。肝血管腫の大きさは2センチほどで、今の段階では経過観察でよいと言われました。

そもそも肝血管腫とはどのような病気なのでしょうか。もし今後、腫瘍が大きくなると、がんになる可能性もあるのでしょうか。また、大きくなった時には、やはり手術をしなければならないのでしょうか。

私は毎日、晩酌をしていますので、少しアルコールを減らすことで良くなるものでしょうか、教えてください。

答え

良性か悪性かの判断が重要です

今回は健康診断を受診して肝血管腫という診断を受けた方からのご相談です。

通常、血管は1本の管状のものですが、何らかの原因で多数の毛細血管が絡み合い、スポンジ状の塊になってしまったのが血管腫です。
肝血管腫は肝臓の中にできる血管腫で、良性の腫瘍です。肝臓にできる良性の腫瘍の約8割を占めていて、人間ドックや健康診断などで行われる腹部超音波検査でよく発見されます。

良性腫瘍なので通常は、健康診断での結果の通り、経過観察でかまいません。また、これにより肝臓の機能が低下するようなことも全くありませんのでご安心ください。アルコールをお飲みになるという事ですが、肝血管腫はアルコールとは無関係なので、これも心配しなくても良いでしょう。

肝血管腫でも、10センチ以上などの大きなものになると、血管腫がお腹を圧迫して食事の際に苦しさを感じるなどの症状が出ることもあります。また、きわめて稀ではありますが、大きなものでは自然破裂による出血が起きることもあります。そのような場合には切除したり薬物により血管腫を小さく縮めてしまうような治療を行う場合もあります。

ここで大切なのは、肝臓の腫瘍の中には良性と悪性があり、単なる良性の血管腫なのか、悪性の肝臓がんなのか、それをきちんと鑑別することです。もし肝臓がんであれば話が全く異なります。

肝臓がんには「肝細胞がん」と「胆管細胞がん」の2種類ありますが、ほとんどが肝細胞がんです。さらに肝細胞がんのほとんどがB型・C型肝炎ウイルス感染によるウイルス性のものです。
肝臓に腫瘍があった場合には、まずこのB型・C型肝炎ウイルスの感染があるかどうかが、大変重要な情報になります。もし陽性であれば、超音波による画像診断が血管腫という判定であっても、大きさの経過を見ながら、肝細胞がんではないかという万が一の可能性を慎重に見ていく必要があります。

もうひとつの胆管細胞がんというのは希なものですが、ウイルス感染とは関係なく発生することがあります。ですがその場合、肝血管腫とは違った見え方をすることが多いので、もし超音波検査で典型的な肝血管腫のパターンを示しているのであれば心配ないでしょう。

腹部超音波での結果だけでは心配なようでしたら、造影剤を使ったCTやMRIなどで検査をすればより正確な鑑別が行えます。例えば、今まで何も異常がなかったのに、今回突然指摘をされたような場合には、一度CTやMRIによる精密検査をしてみるのも良いでしょう。

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髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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