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医療と健康

2021年10月04日

口腔内の自己チェックで「口腔がん」を防ごう

口腔内のがんの罹患率は、がん全体の2%ほどではあるが、年々増え続けているために、決して侮ってはならないもの。幸い、口の中というのは、鏡を使えば自分で観察する事が出来るため、こまめにチェックをする事で、異常の早期発見が可能である。そのためには、まずは口腔がんについて正しく理解していただきたい。口腔がんとはどのようなものなのか、まとめてみたので参考にしてほしい。

 

がん細胞と正常細胞の違い

そもそも、がんというものはどのような病気を指すのか。
我々の体は、皮膚、筋肉、臓器はもちろん、骨、血液まで、すべて細胞によって構成されている。がんというのは、それら細胞が、長期間何らかの刺激を受け続けることによって、その性格が変化してしまったものだ。

細胞には必ず「核」があり、その中には体の構造や生命を維持するための設計図の役割を果すDNAが存在している。細胞ひとつひとつには寿命があるため、古くなった細胞は新しく生まれ変わるのだが、その際、DNAの情報が正しく引き継がれずに、異常を起こしてしまう事がある。DNAの異常を持った細胞が増殖してしまう、これが「腫瘍」と呼ばれるものである。

この腫瘍には、良性のものと、がんとなる悪性のものとの二種類がある。良性腫瘍と悪性腫瘍の違いというのは、ひとつは増殖のスピードだ。悪性腫瘍はとにかく増殖のスピードが速いのだ。そしてもうひとつの違いは、転移を起こすかどうかだ。悪性腫瘍は、体の中を巡る循環器系、つまり血管やリンパ管なども食い荒らし、血液やリンパ液に進入し、体中に流れていってしまう。そして、体内の留まれる場所に辿り着くと、そこで増殖を始めてしまうのだ。これが転移という現象である。がんとなる悪性腫瘍と、良性腫瘍の違いは、増殖の速度と、転移を起こすかどうかが大きなポイントというわけだ。

では、がんになると、人はなぜ命を落とすのだろうか。
がん細胞は無秩序に増え続けるのだが、そのためには栄養が供給されなければならない。がん細胞は、血液中の栄養分をどんどん吸い取りながら増殖を続ける。増殖のスピードが速いため、そのぶん、必要となる栄養の量も多いので、周辺の正常な組織が必要とする栄養分も横取りしてしまう。そのため体は栄養不足となり、衰弱して命を落とすことになる。これががんの本質なのだそうだ。

食生活の変化が口腔がん増加の原因

今、日本では口腔がんが増え続けてきている。口腔がんで亡くなる患者の数というのは、がん全体の中の2%程度だそうだが、日本人の食生活や生活習慣の変化に伴い、近年劇的に増大をしているという。とくに男性は、女性に比べて罹患率が圧倒的に高くなっており、注意が必要だ。

口腔がんが増える原因となったものとして最も注目をしたいのは、食生活の変化、とくに肉類の摂取量の変化だ。昭和30年代の頃、1日当たりの肉の摂取量は約18.7グラムであった。現在の肉類の摂取量は約82.6グラムで、4倍以上も増えている。また、乳製品の摂取量も増えており、32.9グラムから123.9グラムにまで増えている。この50年ほどの間に、いかに日本人の食生活が変化してきたかがお分かりいただけるだろう。こういったものが、口腔がんを増やす要因となっているのだという。

 

口腔内の自己チェックを

では、口腔がんにはどのような種類があるのか。

口腔内において、がんが出来やすい場所を挙げてみると、まず一番多いのが舌、いわゆる舌がんだ。二番目に歯肉、三番目に舌の下側の口腔底、四番目が頬の内側、頬粘膜だ。

口腔内には様々ながんが出来るが、口の中というのは、鏡を使って、自分の目で観察することが出来る。月に一度でも良いので、自分の口の中をまじめに観察する機会を作ることをおすすめする。そうすれば、口の中の異常に気付くチャンスが増える。

 

最後に、口腔がんの危険因子をお伝えしよう。危険因子を知ることで予防に役立てることが出来るだろう。
大事なことは、刺激物の摂取を控えるという事。たとえば、タバコは吸わないようにする。そしてアルコールも危険因子となる。完全に禁酒するまでいかなくとも、少し控えるよう努力することだ。

それからもう一つは、口腔内を清潔に保ち、ウイルス感染を防ぐこと。ウイルスが感染すると、がんのもととなる腫瘍をつくるための刺激となってしまう。
たとえば歯槽膿漏の患者の場合、虫歯は無いのに、それを支えている骨が溶けてきてしまい、歯がグラグラしてきて抜かざるを得なくなる。これは細菌の感染症によって起こっている。最近の統計では、歯槽膿漏が全くない患者と、歯槽膿漏が非常に進んだ患者とでは、歯槽膿漏のない人の方が、がんで亡くなる確率は低いという。口の中に歯槽膿漏など無いよう、綺麗な状態で保つのは、非常に大事なことなのだ。

三つ目は、慢性の刺激を与えないということ。たとえば、虫歯になり、歯を抜いたとする。そこへ差し歯や、あるいは入れ歯を入れたりするが、合わない入れ歯をそのまま使い続けているような人はいないだろうか。そのような状態を長年続けていると、口の粘膜に対する慢性の刺激になる。
また、何かの刺激で歯が割れてしまったりすると、尖った部分が出来る。そういった部分は、知らず知らずのうちに、舌などに当たったりし、悪い影響を与えたりする。そういった慢性的な刺激が、悪性の腫瘍を起こさせる非常に大きな要因になっているのだ。

定期的に、鏡を使って自分の口腔内をよく観察し、このような異常をなるべく早いうちに発見して、早い時期に治療に取り組むということが重要だ。口腔内のがんを防ぎ、QOLを高く保つために、ぜひ実践して欲しい。

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