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2017年06月12日

森の空気が優しく揺れる…京都市中央に隠れた自然「コオロギの里」<市田ひろみ 連載15>

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4月23日。京都朱雀ロータリークラブ職業奉仕委員会の仕事で、パネルディスカッションのパネラーとして出席した。

「世界から注目される京都御所・御苑の来歴」というテーマ。会場は1904年に建てられた京都府庁旧庁舎だ。

観光地京都は、国宝も、重要文化財も、京風も、欧風も、京都通の人にはうれしい町だが、京都府庁や御所はどのように見学すれば良いのかと迷う人もいた。これからは京都の歴史の一頁を見る楽しみな場所になるだろう。

 

実は京都の人は、京都御苑を御所(ゴショ)と通称で呼んでいる。

御苑は仙洞御所を含む、東西700メートル、南北1.3キロメートル、周囲約4キロのウォーキングコースだ。白い砂利に堂々と和風の正殿。歴代天皇の即位の儀式も行われたところだ。

丸太町から今出川、寺町から烏丸、この広い天皇の御所は、四季のうつろいを充分たのしませてくれる自然の恵みがやどっている。

 

私は2007年、福岡の県立博物館で「世界の民族衣装展」を終えた日の搬出の時、舞台から転落して骨折した。

そのまま寝台車で京都へ帰り、入院。優秀なお医者様のお陰で回復し、再び仕事が出来るようになった。

先生は、「ぬくめて寝なさい」ということと「歩きなさい」とおっしゃった。「私も毎日、上賀茂を歩いていますよ。あなたも御所を歩きなさい」

我が家は寺町広小路。まさに御所とおとなりどうし。

その日から私のウォーキングが始まった。東京遷都までは皇族や公家の邸が立ち並んでいたが、今は玉砂利と芝生。土の塀が落ち着いたたたずまいだ。

毎朝ウォーキングをしながら、ようやく私の思いはひとつの森に導びかれるようになった。

「こおろぎの里」

我が家は寺町広小路。寺町通りの清和院御門から入って北へ。もうそこから森の中の幅2メートル位のこおろぎの里に通じる。

全く舗装もしていない自然の道だ。雨の日も雪の日も、やりきれない暑い日も、コオロギの里は昔ながらの土の道で空気が清らかだ。

野鳥が茂みをぬって走りぬける。メタセコイアやいちょうなど、20メートルもあるだろうか。

深い森に季節があり、桜や梅、椿、山吹など。下手な俳句を作りながら歩いたこともあった。今はさぎ草か。白い花が満開だ。

私はヨーロッパでもたくさんの城を見てきた。一人一匹の生きもの、敵を入れない砦だ。

それにくらべて京都御所は、公家の御所屋敷は何とおだやかなことか。世界の城では異例。王の館と民が、こんなに共存しているのはめずらしい。

私は清和院御門からこおろぎの里へ入り、原始の森を北へ向って歩きながら、石薬師御門まで歩く。

時々出会うご夫婦やご高齢のおじさん、女性一人のおしゃれな人もいる。すれ違いながら、さりげなく

「おはようございます」

森の空気はやさしく揺れる。

中途にある鳥の水飲場は、夜明けからカメラを持った人が集る。

京都市の真ん中の自然の森。京都にはまだまだ、歩きのこしているところがあるのではないだろうか。

 

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市田 ひろみ
  • 服飾評論家

重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。

書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。

テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。

二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。

現在、京都市観光協会副会長を務める。

テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。

著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。

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