天の位

愛の手料理笑顔のお酌
酒は明日への力水

惣野代 英子

この作を天位に抜く選者はいかにも大酒飲みのようですが、手酌一合を嗜むだけの男。下の句まですっきりと詠み切ってあることがお見事です。

地の位

何もすることない退屈に
好きな演歌を口ずさむ

高木　まつ

こんな一刻を持てるのも楽しい青春を過ごしたからでしょうね。

人の位

昔恋しく声はり上げて
歌う東京パラダイス

石野　文子

トーキョーが頭に付くヒットソングは沢山ありますが、幾世代か前の雰囲気が漂いますね。東京が明るくて夢の街だった頃の唄ですね。

十　客

豊年囃しか狐の舞いか
遠くかすかな笛太鼓

福田　浩明

ポツリポツリとビニール傘に
雨を打たせる用がある

宮本　ふみ子

通る園児の黄色い帽子
銀杏の下まで黄金色

大西　和子

空は青空白寿の祝い
吾が身いとしく涙ぐむ

葛西　ヤヨヒ

年の数では他人にゃ負けぬ
達者が取り柄の空元気

岩崎　ますゑ

明かり落として小窓をそっと
開けてうっとり月見風呂

王田　佗介

恋の行方は千変万化
その日其の日の君次第

鈴木　曻

すだく虫の音聞き惚れながら
しばしまどろむ仕舞風呂

飛田　芳野

永く生きるぞ秘訣があるぞ
夢を追ったり人を喰う

山田　浩司

色気洒落気を出しては見たが
足のもつれが気にかかる

平澤　英一