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2019年02月26日

「生死誓った戦友靖国に 七十五年が夢の様」2019年2月入選作品|老友都々逸

老友新聞2019年2月号に掲載された都々逸入選作品をご紹介いたします。(編集部)

天の位

生死誓った戦友(とも) 靖国(やすくに)に
七十五年が夢の様

横山 一雄

「とも」とルビを振っていらした「戦友」。どんなに強い絆で結ばれた間柄だったことか。「戦友」という歌も聞こえて来ます。

地の位

母の愛情ねり込む蕎麦を
すする家族の大晦日

惣野代 英子

年越そばを御家庭で作って茹でる。選者には現代のことではなく、日本の懐かしい原風景を窺(うかが)う感さえします。

人の位

スマホ同士がぶつかり合って
恋が芽生えるひょんなこと

鈴木 曻

スマホの無かった青春時代を過ごした私共の世代には想像できない出会いの形体が今ではあるのでしょうね。

十 客

心合わせて競技に挑(いど)み
今年そだねが流行語

高木 まつ

こうしたニュースをテーマにして作品を仕立てることが作者の若さの秘訣か。モグモグタイムもありましたね。

常陸牛肉すきやき鍋が
ばらけた家族を束にする

王田 佗介

下の句に家族を気に掛けているリーダーの目配りが感じられ、常陸牛というブランド名の美味しさが、食べたことのない私にも伝わって来ます。達者な詠み手です。

夕餉味噌煮のふうふううどん
頭並べて親子孫

向井 智恵子

詠みの忙(せわ)しなさに楽しさつどが表れていて、夕餉に集(つど)う三代が活写されています。

昭和一桁 明治の姑の
お教えなつかしありがたし

冨田 いつ子

「姑」は「しゅうとめ」=(夫の母)ですから「はは」と読みます。「ありがたし」に豊かな年功を感じます。

笑い話にゃ気軽く話す
苦労した日の泣き笑い

岩崎 ますゑ

「笑い」で始めて「笑い」で止めましたね。まともに話せば涙になってしまうからですね。

還暦祝いの色留袖を
母娘(おやこ)二代で袖通す

手銭 美也子

「袖を通す」ことを「を」を取る手法より「通す袖」と名詞止めにする方が柔らかい拡がりが出ます。都々逸の味わいです。

娘二十才の成人衣装
映す笑顔の立て鏡

飛田 芳野

「立て鏡」は選者、初めての言葉ですが、いい日本語ですね。「姿見」「鏡立て」など全身鏡に映る皆さんのお喜びがよくわかります。

店の看板横文字ばかり
読めぬ九十の嘆き節

勝亦 はる江

戦時中は敵性語、例えば煙草の「チェリー」は「桜」に改称されましたね。

ルノー日産三菱やまに
ゴーンゴーンの金の音

橋本 くにお

「鐘の音」では無く「金の音」ですか!老友読者にはゴーンと言えばGone with the wind「風と共に去りぬ」でしょうが味気なくなりましたね。

土地は揺れるし 水荒れ狂う
どうした此の星何故荒れる

鈴村 三保子

地球が生きている証據を示しているのでしょう。

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