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2019年02月27日

長引く咳や痰の放置は厳禁! 肺にも炎症が及び「肺炎」にも

風邪のときに発熱は治っても、咳や痰が長引くことがありますね。咳止めなどの薬を服用して3週間以上も治らないことも。そのまま放置していると大変なことになってしまうかもしれません。肺と気管支の不調を防ぐために気を付けるべきことを日本医科大学 呼吸ケアクリニック所長の木田厚瑞先生にお聞きしました。 

前の記事「ただの風邪と思い込んでは危険! 60代からの女性に多い「気管支拡張症」をセルフチェック」はこちら。

X線では分かりづらい「気管支拡張症」って?

長引く咳や痰は、原因は多岐にわたりますが、気管支に炎症が続いている証しになります。気管支は、左右の肺につながり、先端が細かく枝分かれした空気の通り道です。表面には繊毛という細かい毛のような組織があり、粘液を分泌して咳や痰と一緒に異物を喉の奥の方へ排出する仕組みがあります。

「気管支拡張症では、枝分かれした先端の気管支が壊れて広がってしまいます。X線検査では症状は分かりにくいのですが、CTの画像検査では気管支の先端が壊れていることがはっきりと分かります」と木田先生。

生命維持に必要な「呼吸」を担う肺&気管支のしくみを知る

体内に空気を取り込むための各器官

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口や鼻から入った空気は気管を通って気管支を経て肺へ運ばれます。気管支や肺は、いわば外気に直接触れる組織ゆえに、細菌やウイルスが侵入しやすいのです。

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左右の肺に分かれた気管支は、 先端がさらに細かく枝分かれしています。先端が壊れて広がってしまうのが気管支拡張症です。

気管支の先端が壊れてしまうと、異物を排出する力が失われて細菌が繁殖しやすくなります。この状態で風邪になると、気管支では強い炎症を起こし、症状が長引きます。痰に血が混じる症状も起こり、さらに炎症が肺の広範囲にわたる肺炎になると命に関わります。

「かつて気管支拡張症は、子どもの頃に肺炎になった経験を持つ人に発症リスクが高いといわれていました。しかし、現在は、肺炎などの感染症を繰り返すことで、気管支拡張症になることが分かっています。特に日本では、60代以降の女性に気管支拡張症の患者が増えているため、長引く咳や痰には注意が必要といえます」と木田先生。

気管支拡張症では、水道水にも存在するMAC(マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス)という菌に感染する肺MAC症になる人もいます。治療が難しい病気のため、長引く咳や痰の症状は放置しないようにすることが大切です。

誰もがなり得る危険な「肺MAC症」とは?

結核菌とは異なる菌が原因の肺非結核性抗酸菌症という病気が近年増えています。咳や痰、血痰、体重減少など、症状は結核と似ていますが、原因の細菌が異なるのです。細菌の種類はたくさんありますが、最も多い原因菌がMAC菌。そのため肺MAC症とも呼ばれます。他人からうつされるのではなく、自分で細菌を吸い込むことで感染し、誰もがなり得ます。

「かぜ症候群」とは?

風邪の症状は、くしゃみや鼻水、喉の腫れ、頭痛、微熱など多様ですが、喉から上の上気道で起こる症状を「かぜ症候群」と称します。上気道につながる気管や気管支、肺は下気道と呼ばれ、ウイルスや細菌の感染が下気道にまで達すると、咳や痰の症状がひどくなります。咳や痰が伴うのは、単なる風邪ではなく気管支や肺に炎症が起こっている証しにもなります。


次の記事「肺と気管支の不調を遠ざける6つの生活習慣で、風邪やインフルエンザも撃退!」はこちら。

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史


<教えてくれた人>
木田厚瑞(きだ・こうずい)先生

日本医科大学 呼吸ケアクリニック所長。金沢大学医学部卒。 同大大学院修了。カナダ留学などを経て、2003年より現職。同年より日本医科大学呼吸器内科教授兼任後、18年まで同特任教授。COPDなど呼吸器の病気の診断・治療の第一人者。


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