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2019年11月21日

超高齢社会のリアル -健康長寿の本質を探る- 連載3「日本人はなぜ長寿になったのか?」

日本人の平均寿命は、1960年代には欧米先進諸国とほぼ同じ程度でした。その後高度経済成長による国民一人一人の生活環境の向上によって、日々の生活のさまざまな改善が着実に健康水準の上昇に結びつき、1990年代以降は世界的にも常にトップクラスの平均寿命を誇る長寿化を達成しました。このような平均寿命の延伸あるいは長寿化の要因は以下のようにまとめることができると思います。

  1. 社会経済的要因;1960年代以降右肩上がりの経済状況の中で徐々に国民の生活が豊かとなったこと。金回りがよくなれば寿命も伸びると言うことですね。
  2. 医学の発展・医療の均展化と普遍化;国民皆保険制度により、誰でもどこでも比較的良質な医療を比較的な低負担で受けることのできる社会となったこと。日本に住む人々は誰でもどこでも安心して医療を受けられる、すばらしい国だと言うことです。
  3. 著しい栄養改善;国民生活が豊かとなるにつれ、たんぱく質(特に動物性たんぱく質)や油脂類の摂取が大幅にそして望ましい領域に到達したこと。一方で摂取総エネルギー量は適切な領域に維持されたこと。誰でもが美味しいお肉を食べられるようになったことが寿命を延ばしたということになります。
  4. 日本人特有の文化やライフスタイル;伝統的日本食、入浴習慣、健康情報に関心の高いこと、生活密着の運動習慣などのライフスタイルの維持が好影響を与えている。日本人ってそもそも清潔好きで健康志向が強い国民であることが幸いしているようです。
  5. 社会的結びつきや連帯;比較的小さな収入格差、低い失業率、困窮関連死亡率の低さ、低い犯罪率など社会関連資本(ソーシャルキャピタル)が健康を向上させてきた。少し古くなりましたが「1億総中流」とされた時代が長く続いていましたね。

上記の長寿化の要因のなかでも特に食生活の著しい改善は大きな影響を及ぼしていると思われます。全体的な傾向として、米と食塩の摂取が減少し、かわって動物性たんぱく質の摂取、すなわち乳類や肉類の摂取が増加とともに、伝統的な日本食の持つ栄養バランスの良さなどが、日本人の平均寿命の驚異的な延伸に寄与したことは間違いありません。また同時に各家庭には、冷蔵庫が普及し食品の安全な保存技術も向上したことが、かつては日本人特有とまで考えられた胃ガン死亡を大きく減少させたのです。しかし、近年の日本人の栄養摂取には長寿を脅かすといっても過言ではない低栄養あるいは間違った食生活が顕在化してきていることに注意が必要と思われます。

いずれにしても、1960年代以降の個人や家庭のレベル、地域社会のレベルなど全ての面で、日常生活と衛生面でのこまごまとしたインフラの整備や健康情報の浸透など公衆衛生の水準の向上が着実に積み重ねられてきたことが日本人の長寿化の大きな原因です。一方で、国民への社会保障、なかでも公的医療保険制度(国民皆保険)を中心とした保健・医療のシステムを効率的・効果的に運用する制度の整備と充実も図られてきました。これらを背景として1980年代には、男女とも平均寿命が欧米の水準を超え、世界でも類を見ない早さで長寿大国へと進行してきたのです。

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 老年学総合研究所 所長、大学院教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
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老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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