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2017年01月04日

80歳越えた現役ファッションデザイナー「老いを美しく明るく生きるために」

伊藤綾子さんは、日本のファッション界を牽引してきたファッションデザイナーだ。そして、80歳代の今も現役で新しい商品を生み出している。その伊藤さんが心血を注いで創ってきたのが、高齢者ための洋服だ。伊藤さんの波瀾万丈な人生を紹介しつつ、伊藤さんが作るPGファッションに込めた思いを紹介しよう。

伊藤綾子さんの「哲学」

1970年代、当時大学新卒男子の初任給は10万円に満たないほど。そんな時代にファッションデザイナー伊藤綾子さんは、英国の高齢者の様子を視察するためヨーロッパに渡った。
「銀行から70万円程の費用を借り、5歳と2歳の息子を日本に残して命がけの決心で旅立ちました。当時の日本の高齢者は、グレーやベージュの衣服を着、控えめな生活をしていました。でも、英国のお婆ちゃんたちは小花模様の綺麗なワンピースを着、帽子を被って日常を過ごしていたのです」
帰国後、伊藤さんは新しいブランドを創設する。「人生を生きぬいてこられたお婆ちゃんには、「美しい」というより「可愛らしい」という言葉がぴったりだと私は考えました。そしてプリティ・グランドマザー(PrettyGrandmather=可愛いおばあちゃん)のPとGを取り、『PGブランド』を立ち上げたのです」

PGファッションのポリシーの柱は、
①明るい可愛らしい色
②小花模様
③体型をカバーして着やすい
④ロマンチックなデザイン
⑤肌にやさしい素材
⑥装身具をたくさんつける
である。

そして横軸はこの3つだ。
①ノン・エイジ(暦年齢は気にしない)
②ノン・サイズ(既成のサイズに支配されない)
③ノン・チェック(他人の意見に自分を合わせるのではなく、本当に自分が着たい服を着る)

「ファッションは、明るく元気に生きるためのものです。どんなに年をとっても、素敵な服を着て時には緊張感をもつことも大切。何を着ようかと好奇心も生まれますよね。洋服に限らず啓蒙啓発に繋がるでしょう」
2002年には、英国ロンドンのブルガリア大使館ホールで日英素人高齢者モデルによるPGブランドのファッションショーも開催。「日本女性のアイデンティティは確立している」と、このショーはヨーロッパやアメリカ、インドなどで大変な話題となった。

「年齢不問の会」各地でショーを開催

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『秦野老人保健施設みかん』でのファッションショー。お婆ちゃ
んモデルは施設利用者。男子モデルは施設の介護士や理学療法士。

このショーをきっかけに『AYAKO年齢不問の会』が誕生する。
「会はこれまで各地の高齢者イベントに招かれ、北は青森から南は沖縄まで、幾多のファッションショーを開催してきました。そのモデルはすべて素人のお婆ちゃんたちです。特に『秦野老人保健施設みかん』(神奈川県)でのショーは6年も続いています。モデルは施設を利用するお婆ちゃんたち。普段と全く違う表情のお婆ちゃんたちを見て、ご家族も施設のスタッフも感激の涙を流していました。私も会の関係者も、毎回感動しています」

 

母の死と高齢者ファッション

実は、伊藤さんが高齢者のファッションに固執するのには訳がある。
「私が愛してやまなかった母は、60歳という若さで他界しました。ちょうどそのころ、三島由紀夫が東京・市谷の自衛隊東部方面総監部のバルコニーで鮮烈な自害をされています。それをきっかけに私は、死と老いについて深く考えるようになったのです。そして『格好よく死んでいく一瞬のそのときより、老いを美しく生き抜くことの方がどんなに大切だろうか』と思ったのです。ひとりでも多くのお婆ちゃんに、幸せで若々しくあってほしい、そう思ってPGファッションと『AYAKO年齢不問の会』を続けているんですよ」
『AYAKO年齢不問の会』はファッションショーに限らず、遊友の集まりや年1回の総会を開催。著名人の講演や音楽を聞きながら新しい仲間と出会い、交流を深めている。

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《伊藤綾子さんプロフィール》
山梨県生まれ。文化女子短大卒業後、研究所を経てフリーランスのデザイナーに。1995年、通産大臣賞受賞(通気性のすぐれたレインコートで)。『アヤコ年齢不問のPGファッション物語』(産経新聞出版)はじめ著書多数。

興味のある方は『AYAKO年齢不問の会』(事務局:ミネルヴァ工房/電話&ファックス03・6304・0887)までお問い合わせを。(老友新聞社)

 

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