コラム
玉木正之のスポーツ博覧会
2022年04月12日
五輪が「平和の祭典」なら「国家の存在」をすべて否定すべし!
ロシアがウクライナに軍事侵攻したのは北京冬季五輪終了直後のこと。それが国連総会で決議されたオリンピック休戦協定に違反した行為であることは明らかだった。
が、ロシアを非難する声は高くても、休戦協定違反を非難したのは国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長だけ。オリンピックを「平和の祭典」と呼ぶのはタテマエで、オリンピックで世界平和を本気で実現できると思っている人は皆無だろう。
実際、過去にオリンピックが戦争を止めた例はなく、2度の世界大戦では大会自体が中止。ヒトラー・ナチスの国威発揚に利用さて、冷戦時にはソ連(現ロシア)のアフガン侵攻のためボイコット合戦まで起きた。
が、オリンピックが平和に無力と考えるのは早計だ。
戦争とは国家による暴力の行使で、五輪憲章には《オリンピックは個人やチームの競争で国家間の競争ではない》と明記されている。つまりスポーツへの国家の介入を全否定しているのだ。それを完全に徹底すれば、大きな平和へのメッセージになるはずだ。
北京冬季五輪の開幕戦、ロシアの選手たちはプーチン大統領に「ロシアのために多くのメダルを!」と誓った。その言葉は憲章違反。IOCは即座に注意すべきだろう。
東京でも北京でも、大会の開閉会式では国旗や五輪旗の掲揚に自衛隊員や人民解放軍の兵士が登場した。次期開催都市のパリは東京五輪閉会式でミラージュ戦闘機を登場させ、三色旗(国旗)を描かせた。それら軍隊による国威発揚もすべて禁止。
そうして「国家間の競争」につながる要素や軍事色を一切排除すれば、たとえ世界平和を実現できなくても、五輪は、反戦平和を強く主張する存在になるはずだが……。
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