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医療と健康

2022年04月11日

「肺年齢」を若く保とう

肺というものは、空気中の酸素を体の中に取り入れ、代わりに体内で不要となった二酸化炭素を外へ出す、ガス交換をするための臓器である。
呼吸の動作は、自分自身では一切意識をしなくとも自動的に行われる。脳の中心にある呼吸中枢が呼吸のスピード、深さなどを自動的に調節してくれるので、たとえば眠っているときにはゆっくりと、激しい運動をしている時には速いスピードで呼吸が行われる。

呼吸の仕組み

口から吸い込んだ空気は、食べ物を通る食道とは別の道、気管を通ることになる。気管は胸の辺りで左右2つの道に分かれ、それぞれ右の肺、左の肺へと空気が導かれるのだが、そこから先はさらに二つ、三つ……と分かれていき、最終的に20回くらい木の枝のように細かく分かれて、細い気管支となる。気管支の先には肺胞がぶどうの実のようについており、この肺胞の表面には毛細血管がめぐらされ、そこで酸素と二酸化炭素のガス交換が行われているのだ。

肺胞一個の大きさはおよそ30ミクロン(1ミクロンは千分の1ミリ)。全ての肺胞の表面積は、左右の肺を合わせるとテニスコート1枚分もの広さがあるといわれている。呼吸というものは非常に細かい世界で行われているものである。

この肺の機能が高く維持できている人、つまり肺年齢が若い人であれば、それだけ呼吸がしやすく、運動をした際の呼吸も楽に行える。逆に肺年齢が老いている人であると、呼吸がしにくく、苦しくて運動もままならないということになる。肺機能は、年齢を重ねると共に衰えていくものではあるが、肺年齢と実年齢は必ずしも一致するものではなく、年をとっても、出来る限り肺年齢を若く保ちたい。そのことが全身の健康にも繋がるためだ。

肺の生活習慣病「COPD」

COPDとは、いわば肺の生活習慣病のようなもの。その一番の原因は喫煙で、タバコの煙に含まれる有害物質を吸い込むことによって気管支や肺に障害が起きるのだ。有害物質を吸い込むと、気道や気管支は炎症を起こし、末期になると肺胞も壊れてしまう。肺胞は本来、ゴム風船のように弾力のあるものだが、それが劣化を起こし、紙風船のように弾力のないものとなってしまう。

症状としては、風邪を引いていないのに咳や痰が出る、階段を登ったときに息切れがして、途中で休まなければならないなど。こういったことがCOPDの初期症状である。歳のせいだと思って放っておくと、やがて重症化し、座っているだけでも息苦しさを感じたり、会話や食事なども困難になるという。


他にもCOPDの患者で特徴的な症状として、呼吸をする際に、苦しいために口をすぼめるようにする、苦しくて食事もままならないために痩せてくる、酸素が十分に行き渡らないので唇の色や爪の色が紫色になるなどがあるそうだ。思い当たる人はいないだろうか。もし心配であれば、医療機関で検査をしてもらうと良い。COPDの検査は簡単で、1秒間のうちに、どれだけの多くの空気を吐き出せることが出来るか。それをスパイロメトリーという機械で測定するだけだ。

もし、COPDであるということに気付かずに重症化させてしまうと、大変厄介なこととなる。もちろん呼吸が苦しくなるということも辛いものだが、それだけではなく、さまざまな病気が引き起こされる。心臓病、肝臓病、そして糖尿病も増えるという事が分かっているそうで、さらに二次的に引き起こされるものとしては、食事がとり辛くなるために骨粗鬆症が進行したり、動くことも困難になるので廃用症候群、つまり全身の筋肉が衰えてしまうこともあるそうだ。

COPDの治療法

では、重度のCOPDの治療はどのように行われるのか。まずは喫煙者の場合には、禁煙をすることがなにより重要である。何十年も喫煙している人が禁煙するという事は大変辛いことではあるが、禁煙は早ければ早いほどよい。
「この歳になるまで喫煙を続けてきたのに、今更禁煙をしても無意味ではないか……」
と思われるかもしれないが、そうではないという。禁煙は決して「遅い」ということはないそうだ。自分だけの力ではどうしても止められないという人は、禁煙外来を受診してみると良い。

次に、薬を使った治療について。COPD治療に用いられる薬は、主に口から肺へ吸い込むタイプの気管支拡張薬となる。飲み薬と比べて短時間で効果が得られ、さらに使用する量も非常に少なくて済む。副作用も少ないという。

より重症な患者で、どうしても息苦しさが解消しない患者は、在宅酸素療法が行われる。酸素ボンベを使用して酸素吸入を行う必要がある患者に対し、小型の酸素吸入装置を自宅に設置して、24時間吸入を行う事が出来るものだ。小型の酸素ボンベを鞄で背負ったり、手押し車に乗せたりすれば、そのまま外出をすることも可能だ。

肺年齢を若く保とう

最後に、COPDの患者が肺年齢を若く保つための方法を紹介する。患者の息切れの度合いに応じた運動をすることが大切となる。たとえば、荷物を手に持ったり、食事をとったり、着替えたりする際に息切れを起こす人の場合、これらはいずれも上半身の運動である。こういう場合は、上半身を鍛えるような運動療法をするのが効果的である。
運動といっても、日常の生活に近い形の運動を行えばよい。たとえば、座ったままで前にかがみ、何か物を取るような動作を行ったり、あるいは指先で自分の足に触れる。このような日常の動作を組み合わせるだけで十分なリハビリが出来るという。
逆に、歩くときに息苦しさを感じる人は、足、つまり下半身を鍛える運動療法を行う。錘を足首に付けて足を上げる運動、階段を使った足踏み運動、あるいは椅子に座った状態で、肛門をぎゅっと締めるような動作を繰り返し行う。このような本当に簡単な運動でも鍛えることが出来るのだそうだ。大変根気の要るものではあるが、薬と運動療法を共に継続して行うことになる。

健康寿命を延ばすためにも、出来る限り肺年齢を若く保っていただきたい。

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