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2018年07月05日

「春潮のくだけスルスル寄せかえし足許の砂えぐりゆく波」2018年6月入選作品|老友歌壇

老友新聞2018年6月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。(編集部)

一 席

春潮のくだけスルスル寄せかえし足許の砂えぐりゆく波

宮本 ふみ子

春の海の冷たさと心地よさを感じさせ、読者を海辺にいるかのような気持ちにさせてくれる表現の力があります。

二 席

ふんわりと夢のようなる影残し少女去りたる真白きベンチ

荻野 徳俊

たった今まで少女が座っていたベンチに、何か夢のような残像を感じたのです。ベンチの白という色も効果的です。

三 席

過疎化する街の一角にぎやかに閉店セールに集うひとびと

岡本 政子

普段は人が疎らな商店街が、今日だけは賑わっている理由が閉店セールのため。そんな寂しい情景を淡々と表現しました。

佳作秀歌

青梅に口をつぼめて頬すぼめ眉を寄せいる春の少女よ

王田 佗介

酸っぱい青梅を食べている少女の様子が愛らしく、春らしい気分を伝えます。

あらがいつつ何時もの会に顔だして二月終わりぬ風吹くままに

山岸 とし子

「二月終わりぬ風吹くままに」が、納得できない複雑な心情を良く表現しています。

威勢よく彼方此方(かなたこなた)を鯉のぼり風を孕んで大きく泳ぐ

勝亦 はる江

元気に泳ぐ鯉のぼりがあちこちで見られ、気持ちがいい季節になりました。

白線を川に流して別れ来し十五の春は遠くにありて

福田 浩明

作者の母校では、卒業の日に、学帽の白線を川に流し校歌を歌って別れるのだそうです。

草取りに畑に出れば気遣いて妻はやめてとやかましく言う

杉山 勝治

95歳の作者です。奥様のご心配はよくわかっていながら、ちょっと嬉しいんですね。

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