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2026年06月19日

口の健康を見直そう

近年では、口の健康は単に虫歯を防ぐだけでなく、全身の健康や健康寿命にも深く関わっていることがわかってきた。高齢になると、歯や歯茎だけでなく、「噛む」「飲み込む」「話す」といった口の機能そのものが少しずつ衰えていき、さらに口の衰えは食事や会話を不自由にするだけではなく、体力低下や肺炎などにもつながることがある。だからこそ今、改めて口の健康を見直したい。

口の機能低下が全身の衰えに

年齢を重ねると「硬いものが食べにくくなった」「最近むせやすい」と感じることが増えてくるだろう。こうした変化は、単なる老化現象として見過ごさずに、口の機能が低下し始めているサインとして受け止め、しっかりと対策をとることが大切である。

最近では「オーラルフレイル」という言葉も広まりつつある。これは、単に虫歯ができたり歯の数が少なくなっていくだけではなく、口の機能が少しずつ衰え、食べることだけでなく会話なども不自由になっていく状態を指す。初めは小さな変化でも、そのまま放置すると栄養不足や筋力低下につながり、全身の衰えに発展することもある。

例えば、噛む力が弱くなると、肉や野菜など硬い食品を避けるようになる。その結果、食事内容が偏り、たんぱく質やビタミンが不足しやすくなる。また、飲み込む力が落ちると、食事に時間がかかり、「食べること自体が面倒」と感じ、食が細くなってしまう人もいる。

誤嚥性肺炎を引き起こす
歯周病は糖尿・心臓病に影響

口の健康が悪化すると、全身様々な疾患に繋がることもある。その代表が、本紙読者ならば一度は聞いたことがあるだろう「誤嚥性肺炎」だ。

食べ物の通り道である食道と、呼吸する際の空気の通り道である気道は隣同士であり、食べ物が誤って気道に入らないよう、飲み込む瞬間というのは気道への蓋が閉じるようになっている。高齢になると、この蓋の機能が衰え、食べ物や唾液が誤って気管に入りやすくなるのだ。これを「誤嚥」という。さらに口の中が不潔な状態だと、細菌も一緒に肺へ入り込み、肺炎を引き起こすことがある。高齢者の肺炎の多くは、この誤嚥性肺炎が関係しているといわれている。

また、歯周病も軽く考えてはいけない。歯茎の炎症によって増えた細菌が血管に入り込むと、糖尿病や心臓病などに影響する可能性が指摘されている。つまり、口の中の問題は、口だけで終わらずに血液に乗って全身に影響を及ぼすのである。

さらに、先程も少しお伝えしたが、口の不調によって食事量が減ると、低栄養状態になりやすい。筋肉が落ち、体力が低下し、外出が減り、フレイルへ繋がることもある。口の健康というものは、健康長寿を支える土台ともいえるのだ。

こまめに水分補給

高齢者の口の悩みとして多いのが、「口の乾燥」である。最近、「口がねばつく」「水を飲まないと話しづらい」と感じることはないだろうか。加齢によって唾液の量は減ってくるものであり、さらに高血圧治療薬や睡眠薬など、さまざまな薬の副作用で口が乾きやすくなることもある。

唾液には、口の中の食べかすや細菌を洗い流し、口の中を清潔に保つ働きがある。そのため、唾液が減ると虫歯や歯周病のリスクが高まり、口臭も強くなりやすい。また、口が乾燥すると、飲み込みもしづらくなる。食べ物が口の中でまとまりにくくなり、むせやすくなることもある。

口の中の細菌が増え、そしてむせることが増えると、先にも説明した「誤嚥性肺炎」を引き起こす恐れがあるので注意が必要である。

対策としては、こまめな水分補給が基本である。ただし、一度に大量に飲むより、少量をこまめに飲む方が効果的である。また、耳の下からあご先、あごの内側の柔らかい部分にある唾液腺を軽くマッサージしたり、食べ物をよく噛んで食べたりすることも唾液の分泌を促す助けになる。

毎日口腔ケアを

口の健康を守るために欠かせないのが、毎日の口腔ケアである。「毎日歯を磨いているから大丈夫」と思っていても、実際には十分に磨けていないことも少なくない。

高齢になると、手先が動かしづらくなったり、細かい部分までブラシが届きにくくなったりする。そのため、歯と歯の間や奥歯には汚れが残りやすい。歯磨きで大切なのは、「強く磨くこと」ではなく、「丁寧に磨くこと」である。力を入れすぎると歯茎を傷つけることもあるため、小刻みにやさしく動かす方がよい。

また、入れ歯の手入れも重要である。入れ歯には食べかすや細菌が付きやすく、洗わずに使い続けると口臭や炎症の原因になる。毎日きちんと洗浄し、就寝時には面倒がらずに外して、入れ歯洗浄液などに浸して休ませたい。

さらに「舌の汚れ」にも注目したい。舌の表面に白っぽい汚れが付着していないだろうか。それは舌苔(ぜったい)といい、食べかすや細菌などが混ざった汚れであり、体調不良や免疫力の低下、口の中が乾燥していたりするとたまりやすい。専用のブラシや柔らかい歯ブラシで、軽く掃除するだけでも口の中は清潔に保てる。とくに大切なのは就寝前のケアである。睡眠中は唾液が減り、細菌が増えやすくなるため、眠る前の口腔ケアを丁寧に行うことが、虫歯や歯周病予防につながる。

体操や会話・発声練習などで
口の筋肉を鍛えよう

口の健康を守るためにもうひとつ大切なことは、口の機能を保つために日頃から口をしっかり使うことである。

柔らかい物ばかり食べていると噛む力はどんどん弱くなる。無理をする必要はないが、少し歯ごたえのある食材を取り入れることで、口の筋肉への刺激になる。

会話も大切である。人と話すことは、舌や口まわりの筋肉を自然に動かすことにつながる。最近では、口の体操や発声練習を紹介する自治体も増えている。「あ・い・う・え・お」と大きく口を開けて発音するだけでも口の筋肉を動かす助けになる。また「パタカラ体操」といい、「パ・タ・カ・ラ」という言葉を、口を大きく開けてくり返しはっきり発音する練習も口や舌の筋肉を鍛えることに繋がるという。

口の健康は、単に歯を守ることだけではない。おいしく食べること、楽しく話すこと、人と笑い合うこと。そのすべてを支えている。食事が楽しめれば、体も元気になる。会話が増えれば、心も明るくなるし、脳の活性化にも繋がる。口の健康を守ることは、自分らしい生活を守ることに繋がっているのである。

本稿を参考にしていただき、毎日の口腔ケアを改めて見直してほしい。もちろん歯や歯茎の不調や痛み、入れ歯が合わないなど気になる症状があるときは、早めに歯科へ相談することをおすすめする。

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