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医療と健康

2023年04月28日

「足のツリ」

前回は私の経験した眼の老化のひとつである飛蚊症について紹介しましたが、今回も最近私がちょこちょこ経験している「足のツリ(攣り)」についての話題です。若い時にはまったくなかった事なのですが、最近よくこの足のツリに悩まされています。例えば、朝に目が覚めた時、何気なく身体を思い切り伸ばそうとした時、足のふくらはぎ(筋肉名は下腿三頭筋といいます)あるいは弁慶の泣き所(同じく前脛骨筋といいます)などが突然につっぱり、かなりの痛みに伴って「ア、痛たたたた・・」となってしまいます。これがどういう訳か夜中の睡眠時に生ずることもあり、突如として足がツリ、これも「ア、痛たたたた・・」となってしまい本当に始末に悪い出来事なのです。このような足のツリは昔から「こむら返り」とも言います。「こむら」というのはふくらはぎのことで、昔から歳を取ると、「こむら返り」が起きることはよく知られていたのです。

調査によると50歳以上の方ではこのような足のツリは約3割の方が経験しているとの報告があり、歳を取るとともにこの割合は増加し、70歳代の方で半数以上の方が経験すると言われています。しかもこのような突然の筋肉のツリはふくらはぎのある下腿だけではなく、大腿部(前面の大腿四頭筋や後面の大腿三頭筋)やお腹の腹筋(正面にある腹直筋や側面にある側腹筋)にも現れますし、さらに呼吸に使われる胸(胸郭)の肋骨筋などにも現れ、そうなると、息をするのも痛みがあってつらいというやっかいな症状でもあるのです。

足のツリの原因はいくつか考えられますが、やはり筋肉自体の老化がベースとなっています。以前のコラムでも紹介しましたが、高齢になると筋肉量が減少し、筋力(パワー)も衰える「サルコペニア」となりますが、このサルコペニアでは筋肉への血流量の低下、そして筋肉に必要なミネラルなども減少し、筋肉全体の代謝や活動が上手くコントロールされなくなることが筋肉の異常なツッパリとなってこむら返りなどが出現することになると思われます。

年を取ると筋肉のサルコペニアの他、脱水状態にもなりやすいなど、ミネラルのバランスの乱れ、不足が生じ易くなっているのです。また夜中に寝ている時に足がツルのも脱水が関わっていると考えられます。私達は寝ているだけで一晩に約500mlもの汗をかきます。ですので、寝る前から少し喉が渇いた感じがあれば、寝ている間に脱水をきたしやすい状態にあるのです。足のツリや筋肉の異常なツッパリにはまず、OS-1などの経口補水液やミネラルを含んだスポーツドリンクなどの水分を摂取することが簡単な予防のポイントだと思います。これから暑い夏に向かっていきますが、夏場は汗などから特に水分の喪失が多く脱水になりやすくなります。熱中症予防もかねて十分な水分補給やミネラル補給を心がけるようにしたいものです。

たまたまこのコラム記事を書いているときに、アメリカの大リーグで活躍しているパドレスのダルビッシュ有投手が4月23日に行われた試合で好投していたのですが、6回途中で急に足がツリ、そのまま降板したとのニュースが入ってきました。本人も「脱水気味だった」と試合後にインタビューで答えていました。ダルビッシュ有選手のように若くて毎日のようにトレーニングをしているプロの選手でも、足のツリが出てくるものなのです。彼のような若いスポーツ選手の場合は多分、足のツリの原因として単に脱水やミネラルの不足だけでなく、おそらく筋肉の過度な疲労も大きいと思います。プロ選手のように毎日筋肉を鍛えていても試合本番となるとより緊張を強いられ、より強度の強い動作をすることによって一気に筋緊張が高まり足がツッたのではないかと思います。若い時も高齢になってからでも脱水に気を付け、ミネラルをしっかり補給して、筋肉や筋(スジ)を良く伸ばすようなストレッチをしておくことが筋肉のしなやかさを保っておく大事なポイントなのですね。

もうひとつ足のツリによく効く漢方薬も知られています。それは「芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)」という漢方薬です。この薬の効能は「急激に起こる筋肉のけいれんを伴う痛み、筋肉痛、関節痛を和らげる」とされています。服用すると10分位で効いてきますので即効性もあります。芍薬甘草湯は市販薬でだれでも購入できますので、脚のツリに悩む方は一度「適正な用量を守って服用」してみてください。勿論漢方薬にも副作用はあり気を付ける必要があります。心配な場合にはかかりつけ医などお医者さんにも相談してみてください。

「足のツリ」

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 大学院 特任教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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