高齢者のための情報サイト【日本老友新聞】

老友新聞
ルーペ

医療と健康

2025年12月24日

関節炎で膝に水がたまる

一度水を抜くと何度も抜かなければならなくなる?

68歳の女性です。ここ数年、膝の痛みに苦しんでおります。
膝の痛みと共に、膝の皿の周囲がむくんで張っているような感覚があり、近くの接骨院に診てもらったところ、関節炎で膝に水がたまっているので抜く必要があると言われました。
友人にも相談をすると「一度水を抜くと何度も抜かなければならなくなる」「水を抜いても関節の痛みは治らないこともある」と話しています。
「膝の水を抜く」というのは、実際にどのような手術をするのでしょうか。また、ほかに膝の痛みを治す方法はないものでしょうか。

答え

水を抜いただけで完治するわけではありません

今回は膝の痛みと共に水がたまっているという方からのご相談です。
膝には長年にわたり自分自身の体重がかかるため、加齢に伴い関節が傷んでくることが多いです。

関節の中には、動きを滑らかにするために、もともと潤滑油として関節液が存在しています。ところが靭帯や半月板など、膝関節を構成する組織が何らかの損傷を受けたり、加齢による傷みによって炎症を起こしたりすると、それに伴って関節液が増え、水がたまってくることがあるのです。

膝の水を抜くには、注射器の針を刺して吸引をします。特別難易度の高いものではなく、外来で出来るような処置ですので、整形外科の先生であれば通常に行われていることですので心配はございません。

「一度水を抜くと何度も抜かないといけなくなる」というご友人の話ですが、これは誤りで、実際は膝に水がたまるような状況の場合、抜いただけですぐに完治するものではないということです。水がたまる原因となる関節の炎症や組織の損傷などが治らなければ状況は改善せず、水はたまり続けてしまうので、そのため何度かくり返して水を抜く処置をしなければならないのです。水を抜いたことが原因で癖になってしまうということではありません。

ある程度処置を続けても改善しない場合には、元となっている原因を詳しく調べる必要があります。膝にたまった水の成分を調べたり、あるいはMRIなどの画像診断によって膝の組織が損傷している場所や、その程度を見ていくことが大切になります。

消炎剤や鎮痛剤などを使用して落ち着かせるケースもありますし、ヒアルロン酸を膝に注入することで症状が緩和することもあるようですが、関節の損傷が激しい場合には手術が必要になることもあります。

メジャーリーグで活躍する大谷選手が受けた治療法として「PRP(多血小板血漿)」治療という方法が注目を集めております。大谷選手の場合には肘の靭帯を損傷したわけですが、自分の血液から抽出した血小板を主体とした物質を、損傷した靭帯周辺に注入し、それにより損傷部分の治癒を促すという治療法です。
もともとはスポーツ選手に対する治療法として用いられておりましたが、最近では高齢者の膝痛や、膝の手術をした後の病状の改善にもPRPが有用であるということが分かってきました。
通常の治療法を行った上で、それでも症状が改善しない場合には、PRPのような新しい治療法も試してみると良いかと思います。

膝の関節というのは、やはり筋力が落ちることで負担が増すので、膝の痛みの予防法としては日頃から筋力を保つトレーニングを行うことが大切です。しかしながら、すでに痛みや違和感などの症状が出ている場合、トレーニングをやりすぎると逆に膝の組織の損傷を早めてしまうので、症状が出ている時には無理をしないよう注意してください。また、「コンドロイチン」などのサプリメントも、人によっては効果を示す場合があるようですので、一度試してみてはいかがでしょうか。

この記事が少しでもお役に立ったら「いいね!」や「シェア」をしてくださいね。

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

高齢者に忍び寄るフレイル問題 特集ページ

健康への不安や悩みはありませんか?

健康にまつわるご相談を募集しております。医療法人社団同友会理事長がわかりやすくお答えをいたします。

読者投稿の募集はこちら


見学受付中!長寿の森
見学受付中!長寿の森
  • トップへ戻る ホームへ戻る