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医療と健康

2021年06月04日

72歳で前立腺がん見つかる。治療方法の選択肢は…?

体にメスを入れるのが心配です…

72歳の男性です。数か月前に健康診断を受けた結果、前立腺がんの疑いがあると言われました。

そこで別の病院で、MRIや細胞採取の検査などをした結果、やはり前立腺がんでしたが、悪性の度合いは比較的低く、他の場所への転移が無ければ前立腺の切除をすすめられました。ですが、前立腺がんは進行が遅く、切除をしない人もいるという話も聞きます。

いままで手術の経験が無く、体にメスを入れるのは心配です。もし前立腺を切除したら、その後の生活はどのように変わりますでしょうか。また、切除をしない場合の治療法はどのような事をするのでしょうか。

答え

治療法にはそれぞれ長所短所が。状況みて判断を。

今回は前立腺がんと診断を受けて手術をすすめられた方からのご相談です。前立腺がんの罹患率は年々増えてきており、近年の男性の罹患率では胃がん、肺がん、大腸がんに次いで4位で、高齢化に伴って増加することが知られています。

前立腺がんは進行してくると排尿時に痛みを伴ったり、前立腺肥大の場合と同じように残尿感、あるいは頻尿などの排尿障害を起こすこともありますが、最近ではPSAという腫瘍マーカーでのスクリーニング検査が普及しており、症状が出ないうちに発見される場合も多いです。がんが局所的に留まっている場合には良いのですが、恐いのは転移です。前立腺がんは骨に転移することが多く、そうなる前に発見、治療をすることが望ましいです。

手術をするかどうかをお悩みのようですが、もしがんが限局的に留まっていて、さらにある程度のご高齢である場合には、あなたがおっしゃるように、あまり積極的な治療を行わず、経過観察をするだけで良いケースもあります。

一方で、きちんと根本治療を行う場合にはいくつか方法があり、前立腺を切除してしまうか、放射線治療を行うか、または飲み薬によるホルモン療法が効果を発揮する場合もあります。これらの治療法には、それぞれ長所、短所がありますので、個々のがんの状況によって総合的に治療法を決定する必要があるのです。

手術を行う場合、早期であれば前立腺の全摘出を行うのが一般的ですが、その場合、手術の影響が出ることもあります。最近では手術方法などの工夫で、なるべく合併症が起きにくいような手法で手術が行われますが、前立腺の傍には色々な神経が通っていますので、もしそれらの神経が障害を受けると、術後に尿失禁を起こしやすくなったり、性機能が落ちたりすることがあります。

放射線治療は、定期的に病院へ通い、がんの組織に放射線を当てて治療を行うものです。体の外から放射線を照射する方法や、体の中に放射線の線源を埋め込んで照射する方法などがあります。体を切ることなく治療を行えますが、がん組織だけでなく、その周囲の組織、臓器、神経にも放射線の影響が及ぶので、やはりその結果、頻尿、排尿痛、排尿困難、直腸や肛門の炎症、出血、性機能低下などの副作用が起きることがあります。

最近では重粒子線による治療など、より進化した放射線治療もあります。重粒子線による治療は、目的の所だけに狙いをつけて治療を行うことができるので、がんの周囲の正常な組織への影響が少なく治療が行えます。しかしこの方法は先進医療なため、現時点では健康保険の適用にならず、治療費は3百万円程と高額になってしまいます。

飲み薬によるホルモン療法は、アンドロゲン(男性ホルモン)を抑制する抗アンドロゲン薬を投与することで、前立腺がんの進行を抑えるものです。効果がある場合が多いのですが、薬だけで完全に治療効果があるとは限らず、何年か経つと効果が落ちてくることも指摘されています。

これらの治療方法から、ご年齢やがんの進行度なども考慮しつつ、あなたに適切な方法はなにか、主治医と相談してください。不安な場合には、他の泌尿器科医にセカンドオピニオンを聞くことも良いでしょう。

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高谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 /医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック健診協会 理事

    日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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