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医療と健康

2022年04月20日

「お風呂の効果を知り、健康に過ごそう」

みなさんは毎日お風呂に入って身体を綺麗にすることは元より、心身の疲れを癒やしていることと思います。時には温泉にゆったり浸かり心身ともにリフレッシュすることもあるでしょう。

日本における入浴習慣は、6世紀に仏教の伝来と共にやってきたと言われています。また、日本には現在約28,000もの源泉と約3,000もの温泉地があり、古事記や日本書紀にも温泉で心身を癒していたという記録があります。
昔から現代に至るまでお風呂の習慣が続いているのは、お風呂が単に身体を綺麗にするだけでなく、様々な健康効果があると感じられていたからに他なりません。今回はそんなお風呂がもたらす健康効果について、わかり易くお話させていただきます。

実はお風呂に入る(お湯につかる)ことで身体の皮脂汚れなどは殆ど落ちてしまいます。その他には浮力が働き体は軽くなるので膝や腰などが楽になり、また、お湯に浸かると水圧によって下半身に溜まった血液が押し上げられます。横隔膜も押し上げられ肺の容量が9%程度小さくなるので酸素を取り入れようと心拍数が増えて心臓から送り出される血液の量も増加します。そして温まることで、血管の内皮細胞より一酸化窒素が誘発されて血管そのものが柔らかくなるので血液循環が良くなります。加えて温まることで骨と筋肉を繋いでいる腱がやわらかくなり、関節の可動域も広がります。このような効果によって肩こりや腰痛なども和らいできます。

一方、お湯の温度は自律神経に影響を与えます。例えば42℃以上の熱めの湯は交感神経を刺激して心拍数を増やし血圧を上昇させてしまいます。気分も高揚して精神的には休まりません。しかし40℃前後の心地よいお湯は副交感神経を刺激して心拍数は微増になりますが、血管は拡張するので血圧の上昇を抑えて効率良く血液を全身に送ってくれます。気分もリラックスしてきます。

温熱が与える自律神経への影響

入浴温度による角層水分量

これらが「入浴」という行為が身体に与える影響ですが、健康効果として大きいのは「血液循環を良くすること」と「体温を上げる」ということです。人は血液によって、栄養や酸素、免疫細胞やホルモンなどを身体の隅々に運んでいます。ですから血液循環を良くすることで、エネルギーをつくり易くなりますし、細菌やウイルスが身体に侵入してもすぐに退治してくれるようになります。そして体温が上がることで身体の機能を高める酵素の働きを良くしてくれます。また、免疫細胞も活発になるので、体内に侵入した細菌もすぐに退治してくれるようになります。そして、夜お風呂に入れば体温が上がりますが、血管も拡張しているので熱放散もすすみスムーズに体温が下がります。スムーズに体温が下がることで寝付きが良くなり良質な睡眠が取れるようになります。
お湯につかるだけでこのような健康効果が手に入るのですから、疎かにすることはもったいないことです。

しかし、そんなお風呂も注意する点がいくつかあります。お風呂に入ると汗をかきます。汗は血液成分から作られるので、かきすぎると血液がドロドロになってしまいます。お風呂に入る前には水分を取るようにしましょう。また、お湯につかると汚れと同時に皮脂も取れお肌は潤いますが、お風呂から上がると乾燥してしまいます。お風呂から上がったら10分以内にカサカサしているところには、乳液やクリームなどの保湿剤でお肌を覆ってあげましょう。

入浴温度による交感神経活動

今回はお風呂がもたらす健康効果についてお話させていただきました。これらの効果を意識してお風呂に入ることでより健康な毎日が送れます。今晩からお風呂のもつ効果を意識して、お風呂を楽しんでください。

お風呂の効果を知り、健康に過ごそう

石川 泰弘 教授
  • 石川 泰弘 教授
  • 日本薬科大学 医療ビジネス薬科学科 スポーツ薬学コース 特任教授 博士(スポーツ健康科学)
  • 【資格】 温泉入浴指導員(厚生労働省規定資格 ) / 睡眠改善インストラクター (日本睡眠改善協議会認定資格)
  • 2006年より㈱バスクリンで「きき湯」を大ヒット商品に。
    「お風呂博士」として多くのメディアでPR活動を実施。
    全国各地で温泉や入浴、睡眠に関する講演を行う。
    ラグビー日本代表などトップアスリートにリカバリーに関する講演を実施。
  • 2019年4月より大塚製薬株式会社にて健康経営コミュニティ「健康社長」を開設。
  • 2021年4月より日本薬科大学 医療ビジネス薬科学科スポーツ薬学コース 特任教授に就任。
  • 【著書】 「バスクリン社員が教える究極の入浴術 お風呂の達人」(草思社) / 「バスクリン社員がそっと教える肌も腸も健康美人になる入浴術26」(スタンダードマガジン) / 「たった一晩で疲れをリセットする睡眠術」(日本文芸社) / 「たった一晩で疲れが取れる睡眠法」(ゴマブックス)
  • 日本薬科大学 公式サイト
    https://www.nichiyaku.ac.jp/

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