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医療と健康

2021年06月29日

「関節リウマチ」の症状と治療法

朝、目覚めて寝床から起きようとすると、なぜか体が動かしにくい。手足の指の関節や肘、膝が痛む。着替えがしにくいなどの症状を感じたことはないだろうか。「歳だから仕方がない」「高齢になれば皆こうなる」と思い、諦めている人はいないだろうか。もしかするとそれは「関節リウマチ」という病気かもしれない。今月は、関節の腫れや痛みなどの症状が現れる関節リウマチについて、その症状と治療法についてお伝えする。

8~9割が女性罹患

関節リウマチの患者は日本国内だけでおよそ百万人いるとも言われており、そのうち約8~9割が女性だという。関節の痛みや腫れ、変形などが典型的な症状であり、かつては一度発症すると治らない「不治の病」とも言われていた。しかし医学の進歩により、今では痛みや腫れを抑えるといった治療法が確立されているため、早期発見、早期治療を行うことが重要である。

手首・足首、指関節に痛み
むくみや腫れ、こわばり症状

関節リウマチとは、簡潔に言うと自己免疫機能が誤動作を起こす病気である。人間の体には、外部から侵入した細菌やウイルスなどから身を守るための防御機能が備わっている。免疫機能は本来であれば、外部からの悪い侵入者と自分自身の体とを区別し、悪い侵入者のみを攻撃して退治するものであるが、何らかの原因でその機能が誤った判断をし、自分自身、とくに関節周辺の組織に攻撃をしかけてしまう。これが関節リウマチである。
関節リウマチを発症すると、初期の段階では体のこわばりや動かしにくさなどの症状が現れる。とくに寝起きのタイミングで体のこわばりを感じることが多い。病状が進行していくと、手首や足首、手足の指の関節などに痛みが発生したり、熱を持ったり、むくみ、腫れといった症状も現れる。

痛みが強くなると、歩いたり物を持つことにも支障が生じる。ペットボトルのキャップを開けられなくなる、包丁で野菜を切るのに手首が痛む、着替えをするのにも一苦労するなど、日常生活にも影響を及ぼし、QOL(生活の質)が低下してしまう。
さらに病状が進むと関節組織の破壊が進み、骨が脆くなって骨粗しょう症の状態になったり、関節が変形してしまう。ここまで症状が進むと治療は困難となるため、そうなる前に症状を抑えるための治療を進めることが重要である。

関節リウマチの診断

関節の痛みというものは多くの要因で生じるため、関節リウマチの診断は医師の問診、血液検査、画像検査などを行い、総合的に判断をされる。

《医師の問診》
体のどの部分が痛むか、いつ頃から痛むのか、どのような痛さなのかなど、医師が患者に問診を行う。関節リウマチで特徴的なのは、起床して1時間くらいの間、体にこわばりや痛みを感じることが多い。また、体の左右対称の部位が痛んだり腫れたりすることも多く、両手首や両足首などが同じように痛みがある場合などは関節リウマチである可能性が高い。

《血液検査》
血液を採取して、リウマチであるかどうか、初期の段階から高い精度で判定することができる。また現在症状が現れていなくても、将来的にリウマチになる可能性も知ることが出来る。また体内にどれだけ炎症が発生しているかなども血液検査でわかる。

《画像検査》
痛みが生じている患部に対し、X線検査、超音波検査、MRI検査などを用いて画像診断を行う。外見では分からなくとも、関節周囲の組織に腫れが生じていたり、びらん(組織のただれ)、骨が脆くなっているかなどを知ることが出来る。また、関節リウマチの患者は間質性肺炎を併発する可能性があるため、肺をX線で検査をすることもある。

関節リウマチの治療法

一度壊れてしまった関節周囲の組織は自己修復をさせることはできない。関節リウマチの治療は、基本的に痛みを抑える、関節の破壊を食い止めることが中心となるため、治療は早ければ早いほど効果が望める。

《薬物療法》
痛みや腫れ、炎症を抑えるための薬を服用する。薬には様々な種類があるため、患者の体質や過去の病歴などから判断し、適切な薬を選択して使用することになる。
近年では、生物学的製剤と呼ばれる新しい治療薬が続々と開発され、大きな治療効果を認めており、早期に治療を開始すれば関節の障害は最小限でおさえることが可能となってきている。
関節リウマチの薬は自己免疫機能に作用するため、場合によってはウイルスや細菌に対する抵抗力が弱まることもあるため、治療は定期的に検査を行い、担当医師とよく相談をしながら進めていく。とくに高齢者の場合には肺炎球菌やインフルエンザなどの感染にも注意をしなければならないため、予防接種や手洗い、うがい、マスクなどの感染予防策もしっかりと行うようにする。

《外科的治療》
一度壊れてしまった関節周囲の組織は自己修復させることはできない。そのため、関節組織が破壊されてしまうほど病状が進行してしまった場合には外科的手術によって治療を行う。
腫れや炎症が生じている組織の一部を取り除き、痛みを解消させたり関節の動きを滑らかにする手術や、壊れてしまった関節組織の代わりに人工関節を埋め込む手術などがある。

《運動療法》
関節に痛みがあると、動くことが億劫になり、運動量が減ってしまう事がある。すると関節を支えるための筋力が低下し、関節にかかる負担が大きくなり、余計に痛みが生じてしまう。そのため、関節を支えるための筋力を強化したり、関節をスムーズに動かしやすくするためのトレーニングを行う。自己流のトレーニングでは逆に関節を痛めてしまう可能性があるため、必ず医師や運動療法師の指導の下で行うようにすることが大切である。

早期発見、治療が重要

関節リウマチは日によって症状が強く出たり、軽かったりすることがある。症状が軽い時に無理をして仕事や運動をしすぎると悪化させてしまう事があるため、自分のペースを守って、無理をせずに活動をすることが大切である。
またタバコは薬の効果を阻害し、病状を悪化させてしまうため関節リウマチの患者は禁煙が必要である。
繰り返しになるが関節リウマチは早期発見、治療が重要なため、歳のせいと思いこまずに、疑わしい症状がある場合には早めに主治医に相談をしてほしい。

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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