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2016年05月14日

ストレスが主要因・増える「心の病」

今、街中を歩いたり電車に乗ったりしていると、新社会人の姿をよく見かけるだろう。新しいスーツに身を包み、希望や不安を胸に抱え、社会人として新しい生活が始まったばかりの初々しい光景だ。そしてまもなく大型連休を迎えるが、その連休明け頃になると増えていくるのが「5月病」と呼ばれるもので、うつ病の一つであるといわれる。新しい生活環境に心が馴れず、ちょうど5月頃にストレスが一気に吹き出して、うつ病になってしまうとされている。

早期発見ストレスチェック制度

厚生労働省が実施している患者調査によると、うつ病に罹患している患者数は年々増加しており、2008年の時点で百万人を突破しているという(図1)。今現在はさらに患者数は増えていると思われ、さらにこの数は病院を受診している人数であるため、病院を受診せず、一人で思い悩んでいる人の数はさらに数倍に上るだろう。

生涯有病率(人が生まれてから現在までの間にうつ病に掛かったことのある人の割合)はおよそ3%にもなるといわれている。うつ病は、まさに国民病とも言えるものだ。

「ストレスチェック制度」というものをご存じだろうか。2015年12月に、50人以上の従業員を抱える会社に対し、年に1度の「ストレスチェック」が義務化されたのだ。職場でのストレスによって心の健康を害すると、本人や家族にとっても大きな問題であることはもちろん、その従業員を雇っている会社にとっても大きな損失を生むことになる。

ストレスチェック制度は、早期発見、早期治療に結びつける目的と、さらに根本的な原因となっているストレスそのものを低減させ、心の病気が起こらないような社会作りを目指す取り組みとして義務付けられたものである。

過去、生活習慣病による突然死などの問題にスポットを当てて「メタボ健診」がスタートしたのは記憶に新しいと思う。そして今年は「ストレスチェック」が本格スタートする「メンタルヘルス元年」とも呼べるべき年なのだ。

ストレスが主要因
高齢者、女性が男性の2倍

以上のような話だと、ストレスを主な原因とする心の病気、うつ病などは若者、働き世代がかかる病気と思われがちだが、高齢者でもうつ病にかかりやすい。ひとつ特徴的なのは、高齢者のうつ病は男性より女性のほうが2倍ほどかかりやすいということだ。男性の場合、40歳代をピークに、年齢を負うごとに患者数は下がっていくが、女性は高齢になっても多い患者数のまま推移する。

すでに現役を引退し、職場でのストレスチェックを受けられない高齢者の場合、うつ病を見過ごしてしまう可能性が高い。ましてや、うつ病は、他の病気のように血液検査やX線撮影などで診断ができるものではないため、自分自身で「うつ気味である」ことに気がつくことが大切だ。

うつ病診断
9項目のうち5項目該当
症状が2週間以上続く

うつ病の診断基準のうちのひとつ、米国精神医学会の診断基準「DSM-IV」を表にまとめてみた。9つの項目のうち、1または2を含む5つ以上の項目が当てはまり、その症状が2週間以上続く場合に「うつ病」と診断されるので参考にして欲しい。

高齢者のうつ病は、その症状から認知症と間違えられたり、めまいなどでふらついたりすることもあるので、うつ病であると判断されにくい。他者の眼から見て、いつもゴロゴロと寝転がってばかりいる、様々なものに興味を示さなくなった、近親者と死別した、金銭的な悩みがあるなど、思い当たることがないか、家族や親しい友人が注意深く見守ることも大切だ。

もし、自分、あるいは家族がうつ病ではないかと感じたら、すぐに専門クリニックや、心療内科、精神科などの医師に見てもらうことが大切である。実際の診察では、風邪などで病院にかかるのと同じで、まずは医師の問診を受けることになる。どのような症状に、いつ頃から悩んでいるのかなどを詳しく説明する。心療内科や精神科といっても、特別なことは無いので悩まず気軽に受診をしていただきたい。

心を休めるのが治療の第一歩

そして治療となった場合、うつ病は治るまでに長く時間がかかる病気なので、その間、近親者や友人の協力も必要となる。うつ病は体や心を休めることが治療の第一歩であるが、それを見て「怠けている」と思ってはいけない。思うように活動できなくなってしまう病気なのだという理解が必要だ。また「頑張れ」や「気晴らしに外出したら」というような励ましも本人にとっては「責められている」と感じたり、焦りにも繋がってしまうので逆効果である。出来る限りストレス排除し、うつ病にかからない生活を送りたいものだ。

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