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映画のグルメ

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2020年03月04日

№5 007 ロシアより愛をこめて(旧題:007危機一発) ―マティーニをスティアーでなく「シェイクしてくれ!」そのイレギュラーさもボンドの魅力 ―

(1963年:イギリス)
製作:ハリー・サルツマン、アルバート・R・ブロッコリ 監督:テレンス・ヤング 原作:イアン・フレミング 脚本:リチャード・メイボーム 撮影:テッド・ムーア 音楽:ジョン・バリー 出演:ショーン・コネリー、ダニエラ・ビアンキ、ロバート・ショウ、ロッテ・レーニャ

英国情報部出身の作家、イアン・フレミングのスパイ小説の映画化である。美女と酒を愛する凄腕の情報部員“007号”こと、ジェームズ・ボンドが大活躍する活劇映画で、第1作の「ドクター・ノオ(旧題:007は殺しの番号)」から「スペクター」(2015年)まで、50余年で24作品が作られた傑作シリーズである(他に別版3本有)。特に2作目の本作品は最高傑作との誉が高い。

原作小説は、1953年「カジノ・ロワイヤル」がスタートでそれなりの評価を得ていたが、1961年にライフ誌で「ロシアより愛をこめて」がケネディ大統領の愛読書と紹介され注目された。同じ頃このシリーズの映画化を思いついた製作者のアルバート・R・ブロッコリは、映画化権を持っていたハリー・サルツマンと共同で、第1作「007は殺しの番号(007/ドクター・ノー)」(1962年)を世に送り出した。コロンビアに断わられユナイトが出資、100万ドルの低予算だった。

タフでセクシーなショーン・コネリーが主役を演じたこの映画は思わぬヒットとなり、2作目の本作では、活劇とロマンスを見事に融合させ映画ファンを魅了した。この2作でボンド・シリーズの基本が出来、続く「ゴールドフィンガー」(1964年)で名実ともにそのスタイルを完成させ、映画史に残る大ヒットシリーズとなったわけだ。

暗号解読機を手土産に、西側への亡命を希望するロシアの美人スパイが、ボンドに接触してくる。つきまとう殺し屋の影、二人の運命やいかに?ボンドを演じるショーン・コネリーが、精悍で逞しく実にセクシー。アダルトの魅力はダンディーな服装“ボンド・ルック”として世界中を席巻。高度成長で新しい価値観を求めていた日本では、特に大きな影響を残した。公開当時この映画を観た若者は、皆ボンドになりきって映画館を出たものだ!「サイド・ベンツ」や「アタッシュケース」が世界中に流行したのもこの映画からである。

テレンス・ヤング監督のスピーディーでリズム感溢れた畳み込むような演出は、オリエント急行内のボンドと殺し屋の、生身の肉体がぶつかり合う壮絶な死闘で最高潮に達する。美人スパイを演じたダニエラ・ビアンキの、“品のある妖艶さ”と“情感豊かな演技”が、アクション映画を同時にロマンス映画に仕上げ、評価を決定付けた。加えてマット・モンローの甘い主題歌も「旅情とロマンス」をかきたてた。コンピューター・グラフィックスでは出来ない手づくりの温もりがそこにあった。

スパイ映画の本家・英国の作品らしく、アルフレッド・ヒッチコック監督の強い影響も見える。ヒッチファンならコンパートメント(列車の個室)は「バルカン超特急」で、追われながら芽生えるロマンスは「三十九夜」だとすぐ分かるだろう。

ところで、このシリーズのオープニングはカメラのシャッターだと思っている人が多いので解説をしておくと、まず白い点が横に点滅して円の中央にボンドが銃を向けているのだが、実は白い点はボンドを狙う銃口なのだ。したがって、シャッター模様は銃の線条というわけである。念のため!

さてこのシリーズの面白さは、“ハラハラどきどき”“スリルとサスペンス”に溢れた追っかけと乱闘のいわゆる「活劇」にある。それは映画の初期のフランスやアメリカで重要なジャンルであった「連続大活劇」の復活であった。フランスでいえば「ジゴマ」(あまりの人気に日本では上映禁止騒動)、「ファントマ」(後にジャン・マレー主演で復活)、「プロテア」(美人女賊の黒タイツが人気)などである。

これらの作品の影響を受けたアメリカではパール・ホワイトの「ポーリンの危難」「拳骨」「鉄の爪」、ロバート・レナードの「マスター・キー」、ルス・ローランドの「赤輪」、グレ-ス・カーナードとフランシス・フォード(ジョン・フォード監督の兄)の「名金」などがその代表である。

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斉田 育秀
  • 映画史・食文化研究家

1948年横浜生まれ。1973年東京水産大学(現東京海洋大学)水産学部製造学科卒。同年キユーピー株式会社入社。「醤油ベースドレッシング」の販売戦略を立案、ブームの仕掛け人となる。1992年親会社にあたる株式会社中島董商店に移り商品開発部長。2004年よりグループ会社アヲハタ株式会社の常勤監査役となり、2010年退任し2013年まで株式会社トウ・アドキユーピー顧問。その後、株式会社ジャンナッツジャパンの顧問を経て、現在東京海洋大学・非常勤講師(魚食文化論)。この間海外40余カ国、主要130都市を訪れ、各地の食材・料理・食品・食文化を調査・研究する。

映画のグルメ ―映画と食のステキな関係―
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サヨナラおじさん(映画評論家・淀川長治氏)の門下生が書いた、名作映画と食べ物のステキな関係。食品開発の専門家がユニークな視点で解説する、映画と食べ物の話。厳選された映画史上の名画63本(洋画43本・邦画20本)を取り上げる。
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