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コラム

2016年05月12日

「始末する」という言葉の本当の意味は!?「捨てる」じゃありませんよ<市田ひろみ連載4>

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「始末」(しまつ)。もしかしたら、若い人の中には読めない人がいるかもしれない。また、その言葉の意味も、どのように解釈するだろうか。

京都ではよく使われる言葉だけど、これも時間の流れとともに、消えようとしている言葉かもしれない。

京都の人は、大抵親から日常的に言われて来た言葉のひとつだろう。

「捨てたらあかんえ、始末せなあかん」

始末とは、片付けるということではない。ケチというのは、出さなきゃならないときに出ししぶるのを言うが、それとも違う。どんなものでも、そのものに生命があり、使える間は使う、という意味だ。

何でもポイポイ捨てたらあかん。

ケニアのマータイさんによって「もったいない」が世界語になり、温暖化の中で定着した大きなテーマとなった。

物や心に対して、もったいないという心遣いは、民族を越えて地球規模でひろがっていった。

重い学術用語でもなく、世界語としては簡単な単語だ。

「使い捨て」という風潮は、田中総理の頃に流行したが、京都の人は簡単には捨てないから、家の中に物があふれる。

いまだに台所にはアルミのやかんや鍋があるし、木のまな板や洗濯板も揃っている。

川端丸太町を東へ行ったところに、古い荒物屋さんがあり、大体、明治の台所用品は揃う。

私がいつかテレビでアルミの鍋を使っていたら、私のスタッフが、テレビにうつる時は、もっと現代風な鍋を使用してくださいといっていたが、アルミの鍋・釜は軽くて使いやすい。

第一、荒物屋さんに聞くと、常連のお客様がいて、やめられないと言っていた。

昔は、お嫁さんは「世帯持ちが良い」という評価を得るよう親が躾をして育てるのだが、まさに暮らしの中の始末がさりげなく出来る人は今も美しい。

日本の暮らしが便利になって、女性の家事労働も便利になってきたが、何かが失われてゆくように思う。

それは暮らしの中の情感ではないだろうか。

クールビズで、日本の夏を何とか快適に過ごそうとするものの、ころもがえもかわってきた。 

京町家には奥の間に床の間があって、花が活けてあって、お軸がかけてあった。

母は仕事を持ちながら、季節毎に軸をかけかえていた。正月は、日の出か富士山だった。

いつか、軸をかけかえている母に

「桔梗か?」

といったら、

「あほやな、鉄線花やがな」

と言われた。

廊下には一輪差しに野の花が差してあった。

そうして、決してぜいたくな風景ではなかったが、子供心に季節を知った。

その上、我が家は俳句一家で、家族全員、私達も子供の頃から大人にまじって俳句を作っていた。

十七文字の中に季節があり、大人になって仕事する上でキャッチコピーを作るのに役立った。

日本人の美意識は、家の中にも、おもてにも、環境のもたらすものであった。

子供達に季節を通して、日本の心を育ててゆきたいものだ。

明治の親は暮らしの中に四季を感じさせてくれた。それを伝えることが日本文化の語り部としての私の役割となった。そして今、私は親を思いながら、一輪差しに花を活けている。

 

 

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市田 ひろみ
  • 服飾評論家

重役秘書としてのOLをスタートに女優、美容師などを経て、現在は服飾評論家、エッセイスト、日本和装師会会長を務める。

書家としても活躍。講演会で日本中を駆けめぐるかたわら、世界の民族衣装を求めて膨大なコレクションを持ち、日本各地で展覧会を催す。

テレビCMの〝お茶のおばさん〟としても親しまれACC全日本CMフェスティバル賞を受賞。二〇〇一年厚生労働大臣より着付技術において「卓越技能者表彰」を授章。

二〇〇八年七月、G8洞爺湖サミット配偶者プログラムでは詩書と源氏物語を語り、十二単の着付を披露する。

現在、京都市観光協会副会長を務める。

テレビ朝日「京都迷宮案内」で女将役、NHK「おしゃれ工房」などテレビ出演多数。

著書多数。講演活動で活躍。海外文化交流も一〇六都市におよぶ。

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