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2020年01月29日

超高齢社会のリアル -健康長寿の本質を探る- 連載5「健康寿命と不健康寿命」

前回は「健康寿命」について述べましたが、今回は「健康寿命」の対の用語である「不健康寿命」について考えてみたいと思います。 「不健康寿命」ってあまりなじみのない言葉かもしれませんが、実は健康を考える上では、大切な言葉(考え方)なのです。

平成28年(2016年)の日本人の平均寿命は男性が約80.98歳、女性は87.14歳となっていますが、 そのうち要介護状態などで不健康な期間、すなわち「不健康寿命」は男性でおよそ9-10年、女性に至っては約12-13年間となっています。 「健康寿命」という、なんとなく耳触りの良い流行言葉の裏には常に(あまり考えたくないかもしれませんが・・・)「不健康寿命」がまとわりついていると言っても過言ではないのです。 実際私たちのような高齢期の健康対策を研究している者にとっては、いかにしてこの「不健康寿命」を短くするかという問題のほうが、より具体的な対策をとることができることから、より大切な課題となっているのです。

国を始めとして、「健康寿命」を伸ばそうということが盛んに喧伝されています。しかし、このことはもう少し慎重に考える必要があると思います。 平均寿命が50歳、60歳の時代ならば「健康寿命」を延ばす、いわば伸びシロは大きく、実際これまでの日本が歩んでいたように、平均寿命の延びと健康寿命の延びはほぼ並行的に延伸してきました。しかし、平均寿命が80歳を超え、国民の半数が80歳以上も生存するような現在の日本では「健康寿命」の延伸は著しく鈍化し、これを延ばすことは簡単なことではありません。80歳、90歳以上の高齢者では「不健康寿命」が増大するのは、ある意味やむを得ない面もあるのです。 特に今後増加の一途をたどる後期高齢者の健康の状況などから見ても、期待できる健康寿命の増加分は微々たるものであり、むしろ不健康寿命の増加分のほうが大きくなっていく可能性のほうが高いと思われます。

例えば要介護認定の状況を前期高齢者と後期高齢者の区分で見ても、65~74歳で要支援の認定を受けた人は1.4%、要介護の認定を受けた人が3.0%であるのに対して、75歳以上では要支援の認定を受けた人は8.8%、要介護の認定を受けた人は23.3%となっており、75歳以上になると要介護の認定を受ける人の割合が大きく上昇することが分かります。実際、要介護認定を受けた高齢者全体の中では後期高齢者が88%以上を占めているのです。超高齢社会にあるわが国では「長く生きる」ことが可能になった一方で、健康期間の増大よりもむしろ(不可避な現象として)不健康な期間を増大させてきたとも言えるのです。国民全体が長生きし高齢化すればその結果として必然的に高齢者の終末期にはさまざまな障害と病気により死亡原因は多様化し、ある期間は確実に不健康な時期が存在するのは不可避の現象なのです。この事実と原則はしっかりと理解しておく必要があると思っています。

一方で、高齢期での不健康寿命を短くするための研究や医療対策・健康対策もずいぶん進んでいます。次号からは、どのような「健康寿命延伸」の方策や「不健康寿命短縮」の具体的方策について紹介していきたいと思います。

[表] 要介護等認定の状況

資料:厚生労働省「介護保険事業状況報告(年報)」(平成25年度)より算出
(注1)経過的要介護の者を除く。単位:千人、( )内は%
(注2)( )内は、65~74歳、75歳以上それぞれの被保険者に占める割合

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 老年学総合研究所 所長、大学院教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
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老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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