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2020年07月21日

新型コロナウイルスと伝統芸能

日本は、国民の努力によって新型コロナウイルスの第一波を抑え込みました。しかし、残念ながら第二波がすでに始まってきたように見受けられます。未だ有効なお薬やワクチンがないこの病気を抑え込むためには、伝染させないことが唯一の方法です。いわゆる三密の回避やマスク、手洗いの徹底や、外出・移動の自粛が必要と言われるのはこのためです。巷では「新しい生活様式」と呼ばれているこの生活ですが、残念ながらもうしばらく続けていかなくてはならないようです。

新型コロナウイルスは、人の命を奪いかねないという点で十分怖いものです。一方で、新型コロナウイルスが奪うのは人命だけではありません。人々が世代を超えて楽しみ、受け継いできた伝統芸能・文化も大きな影響を受けています。伝統芸能・文化の多くは、先達が後続に教えていく形で継承されていきます。しかし、新型コロナウイルスの流行によって、教室やサークル活動などが長期にわたり自粛を余儀なくされたことで、伝統芸能・文化を楽しむ方々が離れ始めているのです。

私達は、一生かけてどれだけのことを成し遂げられるでしょうか。伝統芸能・文化は、多くの人々が世代を超えて磨きあげることで、人が一代では成し遂げられないことを実現したものです。そして当代の私達は、それを楽しむことで、広め、伝える役割を担っています。この流れが途切れてしまいますと、何十年、何百年と磨かれてきた素晴らしい文化を失うことになります。これはとても残念なことです。

日本には、舞踊、書画、工芸、音楽、武道など、様々な芸事があります。このコラムをお読みの方の中には、すでに嗜んでおられる方も、興味はあるけれど踏み出せないままだったという方もおられるでしょう。これら芸事の多くは人を通じて稽古することが必要ですが、今は冊子や映像メディア、場合によってはオンラインという方法もあります。オンラインで仲間と繋ながることは、アプリをいれるだけで良いので、思ったよりも簡単です。

人という種がただ生き残るだけでは、感染症制御は不十分です。感染症との戦いで新しい知識や生き方を身に着けながらも、継いでいくべき生活や文化を守ることで、はじめて成功といえるのではないでしょうか。

このコラムは伝統芸能を中心に書きましたが、みなさんが日ごろ楽しんでいること、学んでいること、それらはすべて同様に、次代に継ぐべき価値のあるものです。

新型コロナウイルスで最も恐ろしいのは、油断すると浮かんでくる「あきらめの心」かもしれません。感染症は必ずいつか終息します。そのあともずっと楽しくいるために、今の「楽しい」「楽しむ」を大切にしましょう。

渡邉 峰雄 教授
  • 渡邉 峰雄 教授
  • 日本薬科大学 大学院薬学研究科・薬学部 教授、博士(薬学)
  • ワクチン開発などの感染制御を専門とする微生物学者。一方で剣術流派(玄黄二刀流、無外流)の師範も務めている。
  • 日本薬科大学 公式サイト
    https://www.nichiyaku.ac.jp/

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