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2020年11月19日

「気象病」〜古傷が痛むと雨が降る〜

「頭が痛くなると雨が降る」、「古傷が痛むと雨が降る」・・・・・・。それは「単なる気のせい」でしょうか。もしかすると「気象病」かも知れません。気象や天気が変化すると、痛み、めまい、狭心症、ぜんそく、うつ病などを発症し、症状が悪化する場合があります。これらは「気象病」と呼ばれ、日本でも1,000万人の方が悩まれています。そのメカニズムと対応策についてお話ししたいと思います。

「気象病」は、気圧、温度、湿度などの気象因子が関係して発症しますが、中でも気圧が重要であることがわかっています。発症する時期は、気圧が低下する梅雨や台風が接近する秋に多いと言われています。「気象病」の発症メカニズムを図に示しました。

気圧が低下すると耳の「内耳」の部分が気圧を感知します。内耳は鼓膜の奥にあり、気圧のセンサーと言えます。このセンサーが敏感な人は「気象病」になりやすいと考えられています。このセンサーでとらえた気圧の変化が脳へと伝わり、自律神経を活性化させます。自律神経は、交感神経と副交感神経から構成されています。前者は血管を収縮させ、心拍数を上げて身体を興奮状態にし、後者は身体をリラックスさせる働きがあります。両者のバランスが崩れてくると様々な体調不良の原因となります。例えば、「気象病」で痛みがひどくなるのは、交感神経がより活性化することによって、痛みに関する神経を刺激し、さらには血管が過剰に収縮し痙攣して、血管の周囲の神経を興奮させることが原因と考えられています。

次に、「気象病」の予防・治療に関して考えてみましょう。まずは、自律神経系のバランスを整えることが重要です。規則正しい生活、適度な運動、食生活の改善などが大切です。一般的に身体が温まる食事は、自律神経系を整えてくれますので、少しスパイシーな食事も良いかも知れません。自律神経と腸とは密接な関係にあることが報告されています。腸内環境を整える食物繊維や乳酸菌なども良いと思われます。

また、「気象病」の方は、内耳の血流が悪い傾向にあります。その血流を改善するため、耳を摘んだマッサージ(ストレッチ)や血流改善の効果のある目眩(めまい)薬も有効です。さらに、漢方領域での「水の巡り」を整える漢方薬も有効です。「気象病」に多い目眩や頭痛などの症状の改善に良い漢方薬として苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)があります。漢方では、「水の巡り」が悪くなり、特に頭部に余分な水がたまると「気」の巡りを妨げ、目眩が生じると考えられています。よって、苓桂朮甘湯は溜まった余分な水を取り除き、気を補うことにより、目眩や頭痛の症状を改善してくれます。これらの薬は、体質によって異なりますので、かかりつけの医師や薬剤師に相談すると良いでしょう。

天気や気圧の変化を追いながら、自身の「気象病」の症状がいつ出たのかを把握することも大切です。これらの把握は、不安な気持ちを払拭し、「気象病」に対する心構えや薬を飲むタイミングにも活かされてきます。そのような目的に副って、気象予報士が開発したお天気アプリ“頭痛―る”(スマートフォン用)があります。これは、気圧の変化による体調不良が起こりそうな時間帯の確認や、痛み・服薬記録ができるものです。 皆様もぜひ体調管理に活用してみてはいかがでしょうか。

気象や天気の変化による体調不良は、「単なる気のせい」ではありません。近年は、異常気象による、台風、ゲリラ豪雨、猛暑などが多くなってきています。気象が私たちの健康に及ぼす「気象病」を正しく理解し、色々と工夫しながら日々お過ごしください。

櫻田 誓 教授
  • 櫻田 誓 教授
  • 日本薬科大学 大学院薬学研究科・薬学部医療ビジネス薬科学科
    教授、博士(医学)
  • 疼痛のメカニズムの解明と難治性疼痛に有効な鎮痛薬の開発を行っています。
  • 日本薬科大学 公式サイト
    https://www.nichiyaku.ac.jp/

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