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2016年10月13日

2016年9月入選作品|老友都々逸

天の位

あれが苦労の始めと知れば
恋は悪魔の手まり唄

福田 浩明

恋は悪魔の手まり唄は今までに都々逸で表現されていない詩章であって欲しいと思っている。西洋風の悪魔の手まり唄と恋。小笛の音にメフィストフェレスや森の妖精。あれの正体をやっと見抜き始めてきたようだが、手痛い恋のしっぺ返しさえ、火遊び程度で済んだ雰囲気が救いで明るい。

地の位

戦後戦後と言ってるうちに
いつのまにやら戦前に

王田 佗介

戦前を二通りに捕えて第三次世界大戦の予感を技巧なしに、ぶっきら棒に表現した。「戦前のものはよかったなぁ」が第二次世界大戦の敗北、昭和20年代、30年代(1945~1960年代)くらいの繰り言だったが、気が付くと次の世界大戦の息遣いが感じられる。いつ迄も歌謡曲の兄さん面ばかりしていて、こういう硬派をも仲間に入れないと、庶民の中から生まれた都々逸の歴史に笑われる。但し詠み方は雑で再考、再々考が要る。

人の位

夏の浜辺に遠慮はいらぬ
裸同士のお付き合い

惣野代 英子

若い頃のように太陽や浜風に躰をじかに晒すことも出来ないが、海には他に替え難い解放感がある。食べ物も飲み物も普段と別の旨さになる。だからこそ缶、瓶、空箱、吸い殻…などのゴミの持ち帰りなど、基本の道徳心が大事、大事。

十 客

あれば有る様無ければ無いで
妻が家計の折りたたみ

飛田 芳野

今朝もおはよう諏訪湖のトンビ
我が家のお空をひとめぐり

三橋 ユキ

貧しかったが子育て頃が
今に思えば花の時代(とき)

仲野 まつ乃

無人駅舎に野の花活けて
客を迎えるおもてなし

石野 文子

北の祭りだ人出の中を
ふるえながらも寒ビール

葛西 ヤヨヒ

広い地球の片隅飾り
暑さめげずに庭の百合

高木 まつ

そっと風入れ昼寝をすれば
逝った夫がすぐそばに

岡本 政子

特許許可局早口言葉
今はリハビリ朝と晩

山田 浩司

よろめく足許転ばぬ先に
何処ぞ構わず鷲掴み

岩崎 ますゑ

痛む足腰労りながら
余命いつまで続くやら

向井 智恵子

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