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コラム

2025年12月31日

大晦日 〈1年の最後の日〉

(本稿は老友新聞本紙2019年12月号に掲載されされた当時のものです)

2019年、今年はいろいろな事がありました。平成から令和への御代替わりは、国民一人一人が様々な思いと共に迎えたと思います。暑かった夏、大型の台風、即位の礼、ワールドカップ、大嘗祭。私も大変心に刻む出来事の多い一年でした。

まもなく令和元年も終わりに近づき、一年の内で最も慌ただしい季節の到来です。大掃除、お正月の準備や買い出し、年賀状も書かなければなりません。怒涛の一カ月、あっという間に一年の最後の日である大晦日はもう目の前です。大晦日はお正月の準備も全て整え、お正月を迎えるためにのんびりと穏やかな気持ちで除夜を待つ日です。

除夜とは大晦日の夜のことで、除歳、大歳、年越などともいわれています。「つつしみて心しずかにし、礼服を着、酒食を先祖の霊に供え、自らも酒食を食し……一年を事なくて経ぬる事を互いに歓娯し、坐して以って旦を待ち、旧を送り、新を向かうべし」と江戸時代前期の『日本歳時記』に書かれています。
大晦日というのは、このような心持ちで家族と共にテレビでも見ながら迎えるものなのでしょう。

しかし、現実はどうでしょうか。コンビニやスーパーは二四時間営業し深夜も働き続け、バタバタと一日が終わる状態です。

「今宵はいやが上にも荷を積み上げ提灯の数多く、出入りの鳶の者、下職達革羽織、染半纏にて、立番とて客の出入りに心つけたり……往来には露店諸商左右につらなり、飲食露点数数あるは今宵特に多しとす。……往来の人はいずれも弓張提灯を携え、夜明くるまで通行途絶えることなく、この中には獅子舞の遠音、神楽、厄払いの声もまた遠近に聞こゆ。……」これは『絵本江戸風俗往来』の大晦日の光景です。

そして、午前0時。寺院が打ち鳴らす梵鐘は、除夜の鐘としてゆく年くる年を知らせ、百八つの鐘は百八つの煩悩を破り、新しい心で新年を迎えるのです。煩悩とは衆生の心を悩まして、身を煩わし、得道を邪魔するものだといいます。そのために、百八つの鐘によって煩悩解脱、罪障消滅を祈るのが除夜の鐘です。

大晦日にはこの他にも地方によって数々の民間の習俗がありますが、江戸で行われて来たものの一部をご紹介します。

先祖の霊を祀る魂祭「おみたま」は歳神棚や仏壇に「おみたま」というものを供え、特別に炊いたご飯で十二個の小さいおにぎりを作り、お盆やお重に入れて神棚や仏壇に供えます。十二個というのは十二カ月の月数で、毎月先祖の霊を祀るという意味です。

大晦日には古いお札やお守りを神社のお焚き上げで大祓いをするのですが、家庭でも神社から受けて来た御幣で「みそか祓い」をします。「みそか祓い」は「貧乏っぱらい」ともいって、幣束を持って「貧乏神追い出せ、福の神舞い込め」と大きな声を出しながら家の周りを回ったり、座敷を祓う行事です。

最後に「借金茄子殻」。これは大晦日に行う呪いで茄子殻を燃やして「借金を茄子(無し)」にするという語呂合わせです。昔はそれだけ年を越すのが厳しかったのかもしれません。

私も地域の習俗を勉強して、厄を祓い、福を呼び込んで来年も佳き年でありますようにと、謹んで大晦日を過したいと思います。

 

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酒井 悦子
  • 伝統芸能コーディネーター / 筝曲演奏家

幼少より生田流箏曲を学び、現在は国際的に活躍する箏演奏家。

箏の修行と同時に、美術骨董に興味を持ち、古物商の看板も得る

香道、煎茶道、弓道、礼法などの稽古に精進する一方で、江戸文化の研究に励み、楽しく解りやすくをモットーに江戸の人々の活き活きとした様子と、古き良き日本人の心を伝えている。

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