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医療と健康

2021年05月10日

高齢者に多い貧血症状について

 だるい。疲れやすい。動悸、息切れがする……。このような症状でお悩みの方は少なくないだろう。とくに今、新型コロナウイルス感染予防のために皆マスクをつけているので、マスクのせいだと考えてはいないだろうか。それらの症状、もしかすると、貧血かもしれない。今回は高齢者に多い貧血について、症状と原因、そして予防法など、詳しくお伝えしよう。

 

貧血になる原因

我々は生きるために、常に酸素を必要とし、呼吸をしている。口から空気を吸い込むと、その空気中に含まれる酸素を肺が吸収する。酸素は肺から血液へと取り込まれ、心臓に運ばれ、そして動脈を通って全身の細胞へ行き届くという仕組みだ。貧血というのは、血液の酸素を運搬する能力が低下してしまい、全身が低酸素状態となってしまう病気である。
貧血になると、全身に様々な症状が現れる。まず、脳へ供給されるはずの酸素が少なくなるので、頭痛、めまいなどを起こす。心臓へ供給される酸素が少なくなると、狭心症や心不全になったりする。筋肉の酸素が欠乏すると、疲れを感じたり、倦怠感が現れるようになる。胃が酸欠になると、食欲不振、便秘、下痢などを起こす。
このような酸欠状態になると、人間は何とかその状況に対処しようとし、無意識のうちに呼吸数が増え、より多くの酸素を吸おうとし、それが息苦しさとなる。
また、心臓はより多くの血液を送り出そうとし、心拍数を上げる。それが動悸として感じられるという訳だ。さらに、出来るだけ重要な器官に血液を優先的に巡らせるために、すぐには生命の維持に直結しないような、皮膚などの末梢血管を収縮させる。そのために皮膚が青白くなるのだ。

肺から血液へ取り込まれた酸素は、血液中の赤血球によって運搬される。その赤血球は、骨髄の中で、一時間におよそ百億個も生産されているのだが、それと同時に、作られてから約百日たった古い赤血球は、脾臓の中で壊される。こうして赤血球は、作られるのと同じ数だけ同時に壊され、体の中で常に一定の量を保たれているのだ。

貧血になるのは、赤血球の生産量の低下、あるいは破壊の過剰促進によって、体内の赤血球の量が減少してしまうのが主な原因である。だが原因はそれだけではなく、高齢者に多い貧血は、体内の鉄やビタミンが欠乏し、貧血を起こすというものだ。

高齢者に多い鉄欠乏性貧血

赤血球が酸素を運ぶ際に必要となるものが鉄である。赤血球に含まれるヘモグロビンという物質が、鉄を利用して酸素と結びつくためだ。鉄が欠乏すると、ヘモグロビンが酸素と結合することが出来なくなってしまうのだ。
鉄は、食事によって体内へ吸収されると、トランスフェリンと呼ばれるたんぱく質によって、赤血球を作り出す骨髄などに運ばれるのだが、それ以外にも、肝臓に運ばれて、貯蔵される。これは、万一鉄が不足した際に、非常用として使われる、貯金のようなものである。
何らかの原因で鉄が不足し始めると、まず肝臓に貯蔵されている鉄が利用される。そのため、赤血球中の鉄はすぐには減少しないために、初めのうちは貧血症状が現れない鉄欠乏状態となる。さらに鉄が不足すると、肝臓に貯蔵された鉄が底をつき、赤血球中の鉄が減りはじめて、貧血の症状が現れるようになる。

では、なぜ鉄が欠乏するのか。鉄というものは、成人男性で約3・5g~5gほど存在しているが、一日に食事から摂取する量はわずか1mg程度であり、損失する量も、同じく1mg程度である。つまり鉄というものは、あまり体の中を出入りするものではなく、大部分がリサイクルをされているのだ。そのため、いざ出血などで、血液中の鉄が大量に失われてしまうと、それを取り戻す事は容易ではないということだ。
若い女性に貧血の人が多いのは、生理などによる出血で、大量の鉄が失われるためだが、高齢者の鉄欠乏には別に原因があるという。
高齢者の場合には、消化管からの出血、大腸がん、胃潰瘍、痔などによって、慢性的に血液が失われている事がある。すると、血液中の鉄も慢性的に失われていることになるので、鉄欠乏となるのだ。また、食事から摂取した鉄は、胃酸の働きによって、吸収しやすい形に変化させられるのだが、萎縮性胃炎などがあって、胃酸があまりでない方、あるいは胃を切除している方なども、鉄を効率的に吸収することができずに、鉄欠乏となってしまうという。

ビタミン欠乏性貧血

現在発見されているビタミンは、全部で13種類あるといわれているが、その中で貧血に関係するものはビタミンB12と葉酸である。
ビタミンB12と葉酸は、骨髄の中で赤血球を作成する際の材料となるので、これらが不足すると、酸素を運ぶ役割をする赤血球も不足し、貧血となるのである。
ビタミンB12や葉酸が欠乏するのは、摂取不足、あるいは摂取はしているが、吸収に弊害が起きていることが主な原因だという。ビタミンB12は肉類、とくにレバーに多く含まれている。そのため、肉を敬遠しがちな高齢者は、とくに不足しやすいと言えるだろう。ほかにも、卵や乳製品を摂らない人も不足しやすい。また、ビタミンB12を吸収するためには、胃の中の「内因子」と呼ばれる物質が必要となる。ところが、胃を摘出してしまったり、萎縮性胃炎によって胃の中の内因子が不足してしまうと、ビタミンB12を吸収できなくなる。

葉酸が欠乏する原因は、やはり摂取不足である。極端な減食や、アルコールを多量に飲み、栄養素のある普通の食事をおろそかにしてしまう傾向がある人などが摂取不足になりやすいという。
ビタミンB12、あるいは葉酸の欠乏で貧血が起きた場合、それらを補充する治療を行なう。ビタミンB12の補充は、吸収されにくいことから、注射による補充が一般的である。葉酸は通常の内服薬でも補充できるそうだ。

しかし、バランスの摂れた食事を心がけ、鉄、ビタミンB12、葉酸欠乏を未然に防ぐことが最も重要である。ビタミンB12はレバー、葉酸の場合には緑黄色野菜、菜の花、枝豆などに多く含まれている。普段から疲れやすい、息切れがする、めまいを起こしやすいという人は、夏バテや年のせいだと思わずに、注意をしていただきたい。

髙谷 典秀 医師
  • 同友会グループ 代表 / 医療法人社団同友会 理事長 / 春日クリニック院長 / 順天堂大学循環器内科非常勤講師 / 学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授 / 日本人間ドック・予防医療学会 理事 / 日本人間ドック健診協会 理事 / 日本循環器協会 理事 / 健康と経営を考える会 代表理事

【専門分野】 循環器内科・予防医学

【資格】 日本循環器学会認定循環器専門医 / 日本医師会認定産業医 / 人間ドック健診専門医 / 日本内科学会認定内科医 / 医学博士

【著書】 『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』出版:株式会社法研(平成27年7月)【メディア出演】 幻冬舎発行「GOETHE」戦う身体!PART4 真の名医は医者に訊け(2018年6月号) / BSフジ「『柴咲コウ バケットリスト』in スリランカ 人生を豊かにする旅路」(平成28年1月) / NHK教育テレビ「きょうの健康」人間ドック賢明活用術(平成27年5月) / NHKラジオ「ラジオあさいちばん 健康ライフ」健康診断の最新事情(平成25年11月)

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