高齢者のための情報サイト【日本老友新聞】

老友新聞
ルーペ

コラム

三遊亭ぽん太の下町寄席からこんにちは!

三遊亭ぽん太の下町寄席からこんにちは!

2022年01月20日

連載5「好楽一門のお正月」

明けましておめでとうございます。
本年も当コラムをよろしくお願い致します。

さて落語家にとりまして年末年始は大変忙しい時期です。
寄席の出番にホテルの営業、地方の新春落語会など仕事が多いのは勿論のことですが、特に好楽一門は師匠を筆頭にお酒が好きな人が揃ってるので宴会が続きます。
忘年会の数日後には早速新年会なので肝臓の休まる暇がありません。

元日の過ごし方は一門や協会ごとに違いますが、好楽一門の場合はまず朝9時にしのぶ亭に集まり新年の挨拶で乾杯、その後11時から五代目円楽一門会の集まりがお江戸両国亭であるのでそちらに移動して挨拶のち乾杯、一時間程の歓談の後にそのまま円楽一門でやっております両国寄席が開演という流れなのでお客様を迎える頃にはベロベロの人が多数です(笑)
高座が終わった方は楽屋で飲み続けるので客席よりも楽屋の方が賑やか、なんてこともしばしばです。
そんな中でも前座修行中はお酒も飲まず真面目にバタバタと働いていました。
と言いたいところですが、好楽一門にそんなのは関係ありません。
師匠自身が前座時代にお酒が原因で20回以上も破門されかけた人なので必ず飲みます。
潰れる程ではありませんが、必ずビールは注がれます。

「縁起物だから」と言いながら。

いい言葉ですね、縁起物。
落語家になって覚えた言葉で一番好きな言葉かもしれません。
僕も強くはないですがお酒は好きなので何かにつけて「まぁまぁ縁起物だから」と言って飲んでおります。
なんかおめでたい感じしますからね、縁起物。

ちなみに前座時代のお正月三が日の一番忙しかった時のスケジュールは、大晦日の23時から師匠がお世話になってるお寺の除夜の鐘の鐘突の手伝い→宴会→2時過ぎに解散→帰宅→3時間ほどの睡眠→8時頃にしのぶ亭へ行き準備→上記の通りの宴会→両国寄席→20時終演→帰宅→11時にしのぶ亭へ行きしのぶ亭初席を2公演→夜は春風亭小朝師匠のホテルの会の仕事→帰宅→11時にしのぶ亭へ行き2公演→夜は両国寄席に合流→宴会→終電で帰宅、と言った感じでした。
この文章を書いてたら当時のことを思い出してなんか肩凝ってきました(笑)
ただ前座のお正月は大変ではありますが楽しみがあります。

お年玉です。

前座であれば誰でもお正月期間中は師匠方からお年玉が頂けます。
他協会であってもお会いした方皆さんが下さるのでこれが結構な額(十数万円とか)になるので頑張ろう、耐え忍ぼうという気になるのです。
そういえばお年玉は元々お餅で歳神様をお祝いするものだったのが高度経済成長の昭和30年代頃から現金を渡すようになったそうです。
ということは戦前や戦後すぐくらいの落語界ではお年玉という文化は無かったはずなのでこの制度を持ち込んだ方はもう表彰されるべきですね。
誰が言い出したのかわかりませんが。

さてここまで読んだ方は「なんだ案外いい思いしてるじゃないか」と思われるかもしれませんが、お年玉をもらえるのは前座まで。
昇進して二ツ目になれば今度はあげる立場になるのです。
自分も先輩にしてもらったことですので喜んで弟弟子達にあげてます、と言えるような立派な落語家になりたいと思いながら唇を噛みしめつつ渡しております。
ただ真面目な話をすると先輩から頂いた恩はその方ではなく後輩に返すのがこの世界のしきたりです。
師匠好楽は親分肌なので仲間や後輩によくご馳走したりします。
その分が巡り巡って私たち弟子に還元され「好楽さんの弟子なら」と言って各協会の師匠方にお稽古をつけて頂けたりします。
情けは人の為ならずと申しましょうか。
なので私たちも落語界の未来を繋ぐためにも後輩に出来る限りのことはします。
師匠もよく「生きたお金を使いなさい」と言ってますが、自分一人で溜め込んでもいいことはありません。

落語界への投資です。
まぁ地位も名誉もない二つ目にはなかなかの出費ではあるのですが…
さて、そんな悲喜こもごもありつつも賑やかな落語家のお正月もコロナ禍で一変致しました。
宴会は中止、楽屋には残らず出番が終わったら即退散と前座の時は正直めんどくさいと思ってた風景も完全になくなると寂しいものです。

また、今年は久々に賑やかに出来るかなと思ってた矢先にオミクロン株の影響で1月の仕事が結構無くなりました…
どうか来年のお正月はワイワイと騒げるようなんとか2022年中にこの騒動が治まることを祈念しおります。

皆様もどうぞ健やかにこの一年をお過ごし下さい!

三遊亭ぽん太

お知らせ

三遊亭ぽん太の月例落語会
ぽん太ラボvol.27
日時・2月23日(水・祝)14時開演
会場・亀戸梅屋敷
料金・予約1500円、U25割1000円、ぽん太初めて割500円
予約、問合せ・pontathe2nd@gmail.com

この記事が少しでもお役に立ったら「いいね!」や「シェア」をしてくださいね。

三遊亭ぽん太
  • 三遊亭ぽん太
  • 落語家
  • 1985年2月24日生まれ / 愛知県名古屋市出身 / 法政大学社会学部卒 / 2015年2月に三遊亭好楽に入門、前座名「好也」 / 2018年11月二ツ目に昇進「ぽん太」を襲名 / 現在、持ちネタは古典新作合わせて140席以上ある
  • ぽん太さんのHP
    https://pontathe2nd.amebaownd.com/
高齢者に忍び寄るフレイル問題 特集ページ
日本老友新聞・新聞購読のお申込み
日本老友新聞・新聞購読のお申込み
  • トップへ戻る ホームへ戻る