老友新聞2025年6月号に掲載された都々逸入選作品をご紹介いたします。（編集部）

天の位

雪がとけだし　大地が動き
花を咲かせた　福寿草

菊地　幸子

上の句が、雪国の雪と大地とのつながりを見事に表しています。そして目許（めもと）の花にお心を移して、優しい。

地の位

門の紅白　咲き分け梅に
犬も見惚れて　止める足

王田　佗介

一本の木に紅白の花をつける世界遺産、京都二条城の「源平咲き分け梅」は有名。それが、お家の門のそばに在るのですね。犬で無くとも見惚れますね。

人の位

齢をとったら　ナマリで話す
遠いふるさと　なつかしむ

山田　浩司

その話を聞いて呉れる方が身近に居ることが何より大事なこと、嬉しいことですね。

五　客

「春は名のみ」と　唱った頃が
瞼に浮ぶよ　昨日今日

手銭　美也子

唱歌「早春賦」の冒頭「春は名のみの風の寒さや谷の鶯歌は思えど時にあらずと声も立てず」いい歌詞ですね。

夫婦げんかも　すぐ仲直り
妻の背に貼る　湿布薬

下田　尚保

下の句に情愛が満ちて居ますね。

燕「来たよ」と　旋回始む
毎年同じ巣　修繕す

櫓木　香代子

昔はよく目にした燕の巣ですが、近頃私共のところではほとんど目にしません。「来たよ！」の燕からの挨拶が嬉しい。「毎年同じ巣」であることも、お家の人達の優しさの表れですね。

栄一梅子と柴三郎も
出かけてお留守よ　小物（供）だけ

岸　慶子

お財布の住人の格付けは、今日のお夕食の格付けでもあるのでしょうね。

泣いて願いを　かなえてみせる
固い決意の三歳児

佐野　磯雄

泣き止まぬ三歳児の様子を「固い決意」と捕える作者の眼力も流石。