老友新聞2025年9月号に掲載された短歌入選作品をご紹介いたします。（編集部）

一　席

浜辺路を声たからかに白帽の中学生の自転車が行く

岡本　政子

「白帽」で夏という事がわかります。浜辺の海の音、中学生の声、自転車という若々しいアイテム。「夏」の雰囲気が読者に真っすぐ伝わります。

二　席

山と空映す代田の水鏡広々として田植えを待てり

王田　佗介

田植え前の代田の様子が瑞々しく描写され、ゆったりと流れる時間、田植えの季節への期待感を感じさせます。

三　席

緑陰にしばし休める親子連れ墓参帰りか空（から）の桶を下げ

鈴木　とく

空の桶を下げている事から、お墓参りの帰りだろうと想像されたのですね。お墓参りを終えた安堵感が「緑陰」という言葉と響きあっています。