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医療と健康

2021年11月24日

高齢期の仕事について

「働く高齢者4人に1人」

現在の日本は世界で一番の超高齢社会となっています。65歳以上の高齢者人口は3,640万人(女性2,057万人、男性1,583万人)となり、総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%とほとんど30%となりました。このような高い高齢化率は勿論世界一で、第二位のイタリアの23.6%をはるかに上回っているのです。

一方、先日総務省からの公表では、高齢者のなかで働いている人、すなわち就業者数は907万人となっています。これは高齢者のうち25.1%ということで、表題のように高齢者のうち4人に1人は働いているということになります。このような高い高齢者就業率もまた世界のトップで第2位のアメリカ(17.7%)をはるかに上回っているのです。就業者全体のなかで高齢者の占める割合は13.6%となっていますので、働く人の9人に1人は高齢者ということになりますね。また厚生労働省2020年の報告した「60歳以上の収入を伴う就労の意向と就労希望年齢」に関する調査結果によれば、「60歳を過ぎても働きたい」と答えた人の割合は81.8%、「65歳を過ぎても働きたい」と答えた人の割は50.4%と半数を超える方が高齢期でも働きたいと考えていることが示されています。いずれにしても、いかに多くの高齢者が働く意欲をもち実際に社会のさまざまな場面で働いていることが伺えます。

このように、日本の高齢者は就労の意欲もまた実際の就労割合も欧米の国々などに比べ明らかに高いのですが、その理由はたくさんあります。まず第一に、(すでにこの老友新聞でも紹介しましたが)日本の高齢者の健康度、活動能力あるいは労働に耐える身体的能力がこの30~40年間で著しく改善されたことが挙げられます。例えばすでに紹介しましたが歩く速さは男女ともに1990年代の高齢者よりも1.5倍ほど早くなり、いわば10~15年程若返っていますし、握力も着実に強くなり、少なくとも比較的若い前期高齢者では50歳代の身体能力を維持していると言っても過言ではないと思います。また高齢期に働く理由として「経済的な補助」という理由も多いのですが、それ以外に日本の高齢者の特徴的な理由として、「働くことが生きがい」や「働くことは健康によい」など、働くことが自分の生き方にプラスになると肯定的・積極的にとらえている方が非常に多いことが報告されています。私はこのような日本人の就労に関する前向きな気持ちやそれを実現できる能力、そして社会環境は大変素晴らしいことだと思います。今後の超高齢社会の問題や課題を解決する貴重な社会資源として、高齢者の方々の仕事に対する熱意やこれまでの長い間の仕事から得られた知識や経験、さらには仕事に関する強い責任感など、就労に係る様々な能力を高く評価するべきだと思っています。

一方、高齢者の就労に伴う労働環境、特に高齢労働者が安全に仕事をこなして頂くための十分な取り組みが必要となっています。実際厚労省は令和2年3月に「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(通称「エイジフレンドリー・ガイドライン」を公表しています。

このガイドラインでは、高齢者自身も健康維持に努めることも勿論、会社や雇用主など高齢者を雇う側も高齢者に対するきちんとした健康管理が法(労働安全衛生法)で定められている他、体力チェックを継続的に実施したり、安全衛生教育を行い、日頃からストレッチや軽いスクワット運動を取り入れ、基礎的体力の維持に努めることなど、高齢者の労働災害の防止と適切な労働環境への配慮が求められているのです。特に、就労に伴う事故については図に示しましたが、男性では65歳から79歳までのまさに元気な高齢者の年齢層でピークを迎えているのです。最も労働災害発生率の少ない25~29歳に比べると、男性では2倍、女性では4倍以上事故の発生率は高くなっています。中でも作業現場での転倒転落は非常に怖い事故だと思いますが、ガイドラインでは高齢者の特性と作業環境の両方の視点で予防対策をどうするかなどが示されています。昔の高齢者よりも体力的には若返ったとはいえ、とっさの反応力や対応力など、やはり若い世代とは同じというわけにはいきません。高齢者就労に対して十分な配慮や予防対策が必要です。しかし、高齢者が働くことは今後様々な分野で着実に増えていくことでしょう。高齢者の持つ優れた能力で社会貢献が十分可能となるように、国民一人ひとりの理解が深まって欲しいものです。

図 年齢・男女別労働災害発生率

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鈴木 隆雄 先生
  • 桜美林大学 老年学総合研究所 所長、大学院教授
  • 国立長寿医療研究センター 理事長特任補佐
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
超高齢社会のリアル ー健康長寿の本質を探る
老後をめぐる現実と課題(健康問題,社会保障,在宅医療等)について,長年の豊富なデータと科学的根拠をもとに解説,解決策を探る。病気や介護状態・「予防」の本質とは。科学的な根拠が解き明かす、人生100年時代の生き方、老い方、死に方。
鈴木隆雄・著 / 大修館書店・刊 
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